アイディア
新庄の言葉に山田は「うん」と頷き、両目を煌かせて話し出す。
「いいかい。おれたちが設定すれば、その設定は『蒸汽帝国』の世界では、現実のものになる。もちろん、木戸さんのOKは要る。それでも、基本的におれたちの設定が必要という事実には、変わりはない」
山田の言葉に、他の三人は同時に頷く。山田は言葉を続けた。
「だから……破壊を目的とした兵器じゃなく、戦いを無効にするような働きをする兵器だったら、どうだ? 戦いが馬鹿らしくなるような……そうだな……例えば……」
後が続かなくなった山田は、困ったように頭を掻いた。
市川の頭上に、電球が灯った!
「ギャグにしちまえばいいんだ!」
市川は叫び、にったりと笑いを浮かべた。
「何も糞真面目に、戦車とか、戦闘機を出す必要はねえ! 例えば、バナナの皮を打ち出す大砲とかあれば、敵はバナナの皮を踏んで、滑って戦えなくなるとか……」
山田が市川の言葉に頷いた。
「バスター・キートンとか、ハロルド・ロイドのスラップ・スティック映画に出てくるような、馬鹿らしい兵器だな! そうだ! シリアスな戦争映画じゃなく、滑ったり転んだりの、ドタバタ喜劇で行けば……」
うずうずと、新庄の顔に喜色が浮かんだ。
「なるほど! それなら、三村の願いも叶う。ようし、先が見えてきたな!」
立ち上がり、全員に発破を懸けるように両手を振り回した。
「さあ! 仕事だ、仕事だ! 愚図愚図している暇はないぞ!」
市川は新庄の浮かれ調子に「やれやれ」と首を振った。
何だか【タップ】に戻った気分だ。