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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#11 混乱の撮影出し!
153/213

三村の決意

 恐らく洋子も吹き出したいのだろう。それでも神妙な態度で話しかけている。

「あのう……、お姫様、ここに来てからお召し物、替えていないと思うんですが。着替えがありますので、選んではどうですか?」

 エリカ姫の顔がぱっと輝いた。

「まあ、嬉しい! 喜んで、お誘いに伺いましょう!」


 洋子はエリカ姫を伴い、部屋から出て行く。


 王族専用の飛行船には、エリカ姫に相応しい衣装も、たっぷりと用意されていた。それを確認して、今の芝居を思いついたのである。

 三村一人になって、市川は廊下で誰も来ないか、見張っていた新庄と山田に合図する。

 市川、新庄、山田の三人は、三村の前に姿を表した。


 三人の気配に、三村は振り向く。

 途端に、三村の態度に変化が表れた。

 さっと顔が青ざめ、きょときょとと視線が落ち着きなく、室内を彷徨さまよった。


「三村……王子様の役が似合っているなあ」

 市川は皮肉な口調で話しかける。三村はおどおどと俯き、両手を意味なくひねくった。

「そ、そんな……僕は、ただ……」


 山田が穏やかな声を掛けた。

「三村君。責めているんじゃない。君の芝居で、おれたちはかなり助かっている。しかし、そろそろ、おれたちの本来の目的を思い出す時分だと思うんだ。君も承知しているように、この『蒸汽帝国』の世界で、我々がエンディングに辿り着かない限り、おれたちは元の世界へ帰れない。判っているんだろうね」


 三村は、消え入りたそうに、細長い身体を、精一杯ぎゅうっと縮めている。

「はい……。判っています……」


 市川は苛々が募った。

「おい! お前、元の世界へ帰りたくないのか? お前はアニメの制作進行だぞ! 王子様なんて柄じゃない」


 市川の言葉に、三村は窓の外を食い入るように見詰めている。唇が細かく震え、何度も唾を飲み込んでいる。


 新庄が囁くように話し掛けた。

「何か言いたいのか? 言えよ!」


 三村の頬がひくひくと痙攣する。息を大きく吸い込み、身内の決意を高めている。

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