祠
【タップ】は、もともと二階建てのビルで、屋上にプレハブの建物を継ぎ足して三階構造にしている。
一階から二階への階段は建物の内部を通っているが、二階から三階へは外階段を登る。外階段の呼称通り、三階へは吹きさらしの鉄階段を登っていく。二階は動画マンのための部屋で、三階は演出部屋だ。
二階の突き当たりのドアを開くと、ぶあっと生温い風が市川の顔を直撃した。
空気が重い。湿気が相当に高そうだ。
ぴかっ! と、外階段の踊り場に立った一同を、稲光が青白く浮かび上がらせる。
「きゃあっ!」と洋子が悲鳴を上げる。
すぐ、ぱしーんっ……と、雷鳴が聞こえ、がらがらがらと物凄い音が耳朶を打つ。びゅうびゅうと、電線が唸りを上げていた。
屋上の半分ほどを、プレハブの演出部屋が占めている。残り半分の片隅に、小さな祠が設けられていた。どこかの地方神を勧請したとかで、わざわざ新庄が神主を呼んで設置した。新庄は、外見とは裏腹に、随分と信心深いのである。
市川は、かつて新庄が、別の作品のスケジュールが厳しいときに「どうか無事、スケジュールが消化できますように」と祠の前で手を合わせていた場面を目撃している。
おそらく、この数日、新庄は祠に日参しているのではないか?
プレハブの演出部屋の入口ドアでは、三村がひょろ長い身体を折り曲げるようにして、取っ手と格闘していた。渾身の力を込め、ドアを開けようとするが、内側から鍵を掛けているようで、びくとも動かない。
「三村、どうしたっ!」