魔法
二輪車部隊の中には、側車をつけたサイド・カーも含まれている。サイド・カーに座った兵士は、歩兵銃を構えた。
どかーんっ! と、吃驚するほど巨大な銃声が響き渡り、バートル国の重装騎兵に向かって放たれる。音の割りに、銃弾はそれほど威力は無さそうで、敵騎兵の分厚い装甲は、弾を弾き返した。
が、頭部を銃撃された兵士は、衝撃で脳味噌が揺すぶられたのか、くらくらっと眩暈を起こしたように落馬してしまった。跳ね返したとしても、衝撃はかなりあると見え、敵は怯んでいる。
バートル国の騎兵は銃を装備していない。一方的な戦いになるかと思われたが、後方に控えていたマントの一団が奇妙な手つきを始めた。
指先を開き、頭巾に覆われた奥の眼差しは鋭かった。口許が動き、何やらぶつぶつと呟いているようである。
全員、杖を持っている。杖の握りには、大きな宝石が埋め込まれていた。その宝石が、燦然とした光を放った!
轟っ──!
宝石の内部から、何かエネルギーが放たれ、空中をオレンジ色の火球が飛んだ。
火球は空中を真っ直ぐ飛ぶと、ドーデン側の地面に突き刺さるように落下する。
ぐおおおっ! と、地面に落下した火球が膨れ上がり、ドーデン騎兵隊を薙いだ。見守る市川まで熱波が達した。気のせいか、眉毛がちりちりと焦げるようだった。
わあっ! と悲鳴を上げ、二輪車を操縦していた騎馬隊の兵士が火達磨になった。
別の杖を持つマントの男が、再び杖を振るう。
ばりばりばりっ! と、杖の先端から紫電が放出され、オゾンの匂いが、つん、と鼻腔を抉る。
味方は、瞬時に大混乱に陥った!