姫
ドットが大声を上げた。
「バートル国摂政、ターラン大公閣下と、エリカ姫のお出まし──!」
エリカ姫?
市川、新庄、洋子、三村、山田の五人は、ぎょっとなって、そちらに注目した。
緋色に金色の刺繍を施した派手派手しい衣装を纏った、ターラン大公らしき老人と、その手を引いている水色のドレスを身に着けた少女が静々と近づいてくる。二人の背後からは、護衛の兵士がずらりと従っていた。
少女の顔を見て、市川は密かに頷く。
やはり、エリカ……あの、エリカ・ターナと名乗った、田中絵里香をモデルにしたキャラクターである。
「あれは……王子殿下を狙った、女暗殺者ではないですか?」
三村の側に近侍していた騎馬隊長が、呆気に取られた表情を浮かべていた。
「ようこそ、いらっしゃった! わがバートル国は、皆様を歓迎いたしますぞ!」
朗らかな声を上げ、ターラン大公と紹介された太った老人が着座した。その右横に、問題のエリカ姫がしとやかに腰を降ろす。
新庄は、あんぐりと口を開け、エリカ姫をじろじろと無遠慮に眺めていた。
ちら、とエリカ姫の視線が新庄の顔に当てられたが、すぐ逸れる。エリカ姫の視線は、三村に向けられていた。
三村の視線と、エリカ姫の視線が絡み合う。
市川は、息を飲み込んだ。