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アニメのお仕事・改  作者: 万卜人
#9 回想のアフレコ・ダビング
121/213

覗き穴

 場面は夜中の住宅街になった。街灯の明かりの下を、絵里香が肩を怒らせ、大股に歩いている。目には怒りが燃え、口許はきゅっと引き絞られていた。


 新庄のナレーションが被った。




「絵里香は在学中に、雑誌の編集部にアルバイトとして入り込んだ。『蒸汽帝国』を掲載している漫画雑誌の編集部で、木戸の知り合いという関係で、原稿の回収の役目を絵里香は任された」




 絵里香は三階建ての、外階段のついた集合住宅玄関に立つ。目を上げ、窓に明かりが灯っているのを確認すると、勢いよく階段を駆け登っていった。


 ドアの前に立ち、インタホンを押す。

 室内でチャイムが鳴っているが、返事はなかった。絵里香はドアの覗き穴を睨んだ。


 ふっと覗き穴が暗くなる。


 絵里香は叫んだ。

「純一っ! そこに隠れていないで、開けなさいよっ! いるんでしょっ?」


 さっと覗き穴が明るくなった。

 穴に目を押し当てていた木戸が、慌てて身を引いたのだ。


 絵里香は思い切り、ドアを蹴飛ばした。

 がん! もう一度。ぐわん! と、大袈裟な音が深夜の住宅街に響く。


「開けないと、朝まで続けるからね!」

「わ、判った……」


 蚊の鳴くような心細い声が聞こえ、開錠音がして、僅かにドアが開く。

 絵里香はドアノブを両手で握りしめ、閉じられないよう、力任せに開く。

 わわっ、と木戸が外へ飛び出してきた。どてん、と見っともなく転ぶと、青ざめた顔を絵里香に向ける。


「え、絵里香……」

「入るわよっ!」


 返事も待たず、絵里香は土足のまま、ずかずかと木戸の仕事部屋へと踏み込んでいく。

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