新連載
やがて葬式は終わり、一同は外に出る。
並んで歩き出した新庄と木戸に、絵里香が駆け寄った。表情には怒りがはっきりと見てとれ、眼差しは険しかった。
しかし、怒りに燃えていながら、絵里香には曰く言いがたい美しさがあった。怒りは、絵里香の美しさを微塵も損なわず、むしろ別の美しさを付け加えているようであった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
二人は、ぎくりと歩を止めた。木戸は絵里香の凝視に、顔を背ける。絵里香の怒りの視線は、木戸一人に向けられていた。
絵里香は手に、一冊の漫画週刊誌を持っている。絵里香はその雑誌を、木戸に向け、突きつけた。開いたページは『蒸汽帝国』連載のものだった。
「これは、何? 昨日発売の雑誌よ。あんたの新連載とやらが載っていたわ! どうして祐介の名前がないの? この漫画は、祐介の原作でしょ?」
絵里香の突きつけた誌面を見て、新庄は驚きの表情になった。さっと木戸を見て、新庄も詰問の口調になった。
「おれも知らなかった! てっきり原作者の名前に、祐介の名前が入るものだと……」
顔を背けたまま、木戸はもごもごと口の中で呟くように答えた。
「祐介が言ったんだ。自分の名前は出さなくていいって……。おれの……木戸純一名義で描いてくれと……。だから……」
絵里香は怒りから、呆れ顔になった。
「そんなヨタ話、信じろと言うの?」
が、新庄は考え込む表情になる。
「いや……祐介なら、ありえる」




