似顔
場面は変わって、葬式の映像が現れた。単調な読経の声が響き、あちこちで啜り泣きが聞こえている。
遺影が正面にあって、それは祐介の顔だった。そこに新庄のナレーションが被った。
「最終学年、卒業間際に、祐介は死んだ。新入生歓迎のコンパで、一気飲みの、急性アルコール中毒だった……」
「ちょっと待って!」
洋子が金きり声を上げ、市川は再び客室に座っている自分を取り戻す。洋子は呆れたように眉を上げ、新庄を睨んでいる。
「胸の病気で死んだんじゃないの? 今までの話の筋なら、どう考えても……」
新庄は素っとぼけた表情で、肩を竦める。
「祐介は虚弱体質だったが、喘息だ。胸の病気とは違うよ」
洋子は、がっかりしたように「はーっ」と溜息を吐いた。新庄は「続けようか?」と誰ともなしに呟く。
一同はもちろん、大いに頷く。先が知りたいからだ!
「葬式の際……」
新庄が話を再開し、再び回想に戻る。
神妙な表情で、木戸と新庄が正座をしている。少し離れた場所に、絵里香の姿もあった。
木戸は、ちらちらと絵里香の横画を盗み見、手元のメモに、何か描いていた。メモがアップになると、それは絵里香の似顔だった。
隣に座る新庄が、木戸の手元を覗き込んで呆れ顔になる。
新庄は木戸を肘でつつき、囁く。
「おい、葬式の最中だぞ! 場所をわきまえろ!」
新庄に注意されて、木戸は顔を赤らめた。が、絵里香を見つめる視線は、じりじりと焦げるほど、熱っぽい。




