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剣戟
ぎょっと、その場にいた全員が凍りつく。
魂消るほどの喚き声を上げ、女は振りかぶった剣を、三村目掛けて振り下ろした!
自分でも何を叫んでいるのか判らず、思わず市川は飛び出していた。かっ、と血液が逆流し、市川は自分の剣を抜き放っている。
ちゃりーん!
市川の剣と、女の剣が空中で火花を散らした。
ぎりぎりぎり……と、女は恐ろしい膂力で市川の剣を押さえ込む。市川は近々と女の顔を覗きこんでいた。女の両目には、怒りと、激しい闘志が、めらめらと燃え盛っている。
「邪魔……するな!」
女は一言一言、息を詰めて、区切りながら話し掛ける。
「そうは、いかねえよっ!」
市川は「うむっ!」と全身に力を込めると、思い切り女の剣を撥ね上げた。ちらっと振り向くと、三村は呆気に取られた表情で、その場で立ち竦んでいる。
「三村……」と言いかけ、市川は言い直した。
「アラン王子殿下っ! お逃げ下さいっ!」