女兵士
「おい! 外を眺めるのは、いつでもできる! それより、謁見だ!」
新庄の言葉に、市川はぎこちない仕草で、窓から身を離した。
洋子も身を離し、市川の背中の二つの重みが消えた。もう少し、堪能したかったのに!
ドアを出て、狭苦しい廊下を三村を先頭にぞろぞろと歩く。
真っ直ぐ進むと、船尾部分に向かう。そこは広々として、公的な行事を執り行える構造になっている。
船尾には、すでに三村の──いや、アラン王子の謁見を待つ護衛の兵が整列していた。
みな、きちんと制服の皴を伸ばし、背筋をぴんと反らし、アラン王子の今や遅しと、到着を待っていた。
「アラン王子殿下! 謁見──!」
入口で待ち受けていた儀場兵が、爵杖を振り上げ、高々と語尾を延ばして叫ぶ。ざざっと音を立て、全員が直立した。
ゆったりと王族の威厳を漂わせ、三村が歩き出す。市川たちは御付きの者であるので、入口付近に立ち止まって控えている。
と、市川の視線が、列の真ん中付近に立っている一人の女兵士に止まった。
あの女だ!
なぜか女兵士は、ぎらぎらと怒りの視線を三村に注いでいた。口許がぎゅっと引き絞られ、強情そうな意志の強さを顕している。
三村が女兵士の前を通り過ぎると同時に、女は腰の剣をすらりと抜き放ち、叫んだ!
「アラン王子! 覚悟!」