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感触
「おい! ストーリーが動き出したじゃないか!」
新庄が爛々と目を輝かせている。
市川はさっと身を翻すと、窓に顔を近づけ、外を覗き込んだ。
地平線の彼方に、森に囲まれた王宮と、その周りを城下町がぐるりと取り囲んでいる。全体に中世ぽい雰囲気で、ごつごつとした岩山に、へばりつくように城が聳えている。
市川は子供のように叫んでいた。まさしく、たった今、山田が設定したお城である。
城のデザインは、中世ヨーロッパに準拠していたが、山田は中近東らしき、モスクの建築様式も取り入れ、どことなく無国籍な雰囲気を漂わせている。
「バートル国の王宮だ!」
市川の側に洋子が近づき、顔を並べた。
「本当だわ! 凄く綺麗……」
無意識であろうが、洋子の胸が市川の背中にぎゅっと押し付けられていた。柔らかな胸の丸みが、はっきりと感じられ、市川は思わず顔が火照るのを感じていた。