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ノック
「どうしたの、平ちゃん?」
洋子が心配そうに声を掛ける。
新庄はぷい、と横を向いた。
「何でもない……」
「何でもなくは、ないだろう!」
市川の声が甲高くなった。一歩、ずい、と前へ出ると、新庄を睨みつける。
「そのキャラ、おれたちが兵士募集で王宮に集まったときにもいたぜ。あんたは顔を合わせているはずだ。憶えてないのか?」
新庄は、ぽかりと口を開いた。目が虚ろになっている。
「あっ! そういえば! 確かに、見た覚えがある……。だが、あのときは、まだ君らに声を掛けられる前で、記憶が戻っていなかった……」
市川は唇をぺろりと舐めた。
「それに、言わせて貰えば、その女。この飛行船にも乗り組んでいる!」
「えっ!」
新庄は今度こそ、心の底から驚いた様子で、両肩ががっくりと下がっていた。よろよろと数歩、後ろに下がり、頭に手をやって呆然となった。
さらに問い詰めようと、市川が息を吸い込んだ瞬間、ノックの音が響いた。
ぎくり、と一同は身を強張らせた。