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癇癪
床に散らばった設定画を、新庄は這いつくばるようにして掻き集めていた。
と、その手がぴたりと止まる。一枚の設定画を手に、さっと立ち上がり、無言で手元の紙を見詰めていた。
表情が険しくなっている。
「このキャラ表は?」
市川は、新庄の問い詰めるような厳しい口調に驚いて、顔を上げた。新庄は真剣な眼差しで、市川を睨んでいる。新庄の手にしているのは、お姫様のキャラである。
「ああ、そりゃ三村のお嫁さんだ。つまり、これから行く隣国のお姫様だよ」
「何で、このキャラを設定した?」
明らかに新庄は詰問の口調だ。市川はむらむらっ、と癇癪の虫が、むくりと頭をもたげるのを感じていた。
「何でって、知らねえよ! 手が勝手に動いたんだ! どうして、そのキャラが気になるのか教えてくれよ! 元々は木戸さんが、おれにラフを描いて寄越して、これを後で使うからキャラクター起こしてくれと頼んだんだ」
「そうか……」
新庄は、ほっと肩の力を抜いた。が、眉は未だに顰められ、何か考え込んでいる様子だ。