完成
「そりゃあ、できるけど……」
洋子は不服そうに唇を尖らせた。
色指定の番号でやれる、というのは、洋子がデジタル以前の、手作業で色を一枚一枚しっかり塗っていた頃の作業をやっていた証拠である。歳がばれると思ったのだろう。
洋子は市川からキャラクター表を受け取ると、素早く色番号を指定し始めた。
「あら?」
洋子は目を丸くした。
「どうした?」
市川と山田は、洋子の手許を覗き込んだ。
「色が……」
洋子が手にしたキャラクター表に、見る見る色が着いていった。鮮やかな色彩で、あっという間に色指定表が完成していた。
「おいおい、こっちもだ……」
山田が頓狂な声を上げる。
市川は山田の美術設定を見て、驚いた。
「山田さん、いつ色を着けた?」
山田の描いた美術設定には、すでに色が着色されていた。背景画そのもののタッチで、美術ボードとなって完成している。
山田は呆れたように首を振った。
「判らねえ……。おれは設定を描くとき、絵の具で描いた完成画を頭に浮かべて描くんだが、一枚、描き上げた途端、こうなった……」
「ふうん」と市川は一人、頷いた。
「多分、これも、この気違いじみた世界での約束事なんだろうな。いいじゃないか! 山田さんも、ラクできらあ!」
新庄が立ち上がり、三人の背後に立った。
「美術設定と、キャラクター表ができたのはいいが、これをどうするんだ?」