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最強メイドは今日も力で事件を解決する  〜国家戦力級の暴走メイドに奔走する新人課長。実はこいつが一番ヤバい件〜  作者: 犬斗
第二章 シェリーナ・リアデル

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第5話 猫を助けるために壁を壊した件4

 シェリーナはまずリビングへ向かった。

 二人掛けのソファーに目を向けると、三匹の猫が重なり合うように寝ている。


「猫ちゃんたち、こんにちは。今日もよろしくお願いしますね」

「「「ニャー」」」


 シェリーナに気づいた猫たちが、挨拶するかのように鳴き声を上げた。

 そのうちの一匹がソファーを飛び降り、シェリーナに近づく。


「君は、この間の黒猫ちゃん」

「ニャー」

「元気でしたか?」

「ニャー」


 隙間に挟まった黒猫だ。

 シェリーナのことを覚えていたようで、足にすり寄る。


 シェリーナは床に正座し、猫に目線を合わせた。


「今日はもう落ちちゃダメですよ」

「ニャー」

「掃除している間は、おとなしくしていてくださいニャー」

「ニャー」

「いい子ですニャー」


 シェリーナは猫をそっと抱え上げ、ソファーへ運んだ。

 そして、トランクケースから仕事道具を取り出す。

 組み立て式のホウキをセットして清掃を開始。


 シェリーナはメイド課の中で、最も始末書を書いているメイドなのだが、一つ一つの仕事はとても丁寧だ。

 また、その容姿と柔らかい人柄から、顧客に気に入られることが多い。


 掃除を終え、夕飯を作り置きして業務は終了。

 シェリーナは言われた通り、鍵をドアポストに入れて帰宅した。


 ――


 一週間後、今回の契約で最後となる二回目の派遣日を迎えた。

 シェリーナは出かけるジュドーを見送り、さっそく仕事を開始。


「猫ちゃんたち、こんにちは」


 いつものように、ソファーで重なり合ってくつろいでいる三匹の猫。


「「ニャー」」


 二匹の猫がシェリーナに向かって鳴き声を上げた。

 だが、シェリーナに懐いていたはずの黒猫は反応しない。


「あら? 黒猫ちゃんは元気ないのかな」


 ソファーに近づき、黒猫を抱えようと手を伸ばす。


「シャアアアアッ!」


 黒猫は威嚇の声を上げ、シェリーナの白い手に向かって剥き出しの爪を振り下ろした。


「え? どうしたんですか?」


 シェリーナは不思議そうな表情を浮かべながらも、焦らず余裕を持って、猫の速度よりも速く手を引いた。

 少しでも遅れていたら、五本の爪痕が残り、流血していただろう。


「シャアアアアッ!」


 空振りしてしまった黒猫だが、毛を逆立てながらシェリーナを威嚇。

 穏やかな黒猫の姿は、どこにもなかった。


「あれ? もしかして……違うの?」


 シェリーナが黒猫を観察すると、違いに気がついた。

 同じ黒猫だが、瞳の大きさが微妙に違うことと、瞳孔の色も若干薄い。


「瞳の大きさが変わることなんてない……」


 疑惑がよぎる黒猫を見つめていると、廊下からも異変を感じた。


「なんでしょうか……。この臭いは……」


 シェリーナは廊下に出た。

 嗅覚の鋭いシェリーナは、僅かに感じる臭いを辿る。

 最も強く臭いを感じる場所は、廊下の石壁だった。

 壁は不揃いの大きさの石を加工して積み上げられており、その隙間をモルタルで埋めている。


「この壁……。よく見ると隙間があります」


 シェリーナが石壁を観察すると、石と石の間に極僅かな隙間を発見。

 その隙間を指でなぞると、人が屈んで入れるくらいの半円になった。

 さらに、廊下と石壁の間にも僅かな隙間がある。


「扉ですかね? でも取っ手はないし……」


 しかし、石壁の隙間からは、微量な空気の流れを感じる。

 臭いの元凶は間違いなくここだと確信した。


「もしかして、隠し扉ですか?」


 シェリーナは周囲を見渡した。


 ◇◇◇

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