表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強メイドは今日も力で事件を解決する  〜国家戦力級の暴走メイドに奔走する新人課長。実はこいつが一番ヤバい件〜  作者: 犬斗
第三章 リリア・カルサス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/16

第15話 魔女と老人2

「皆さん、おはようございます」

「「「おはようございます」」」


 メイド課の朝礼だ。

 朝礼では注意事項を伝え、メイドたちの業務を共有する。

 俺は課長席の前に立ち、自席で起立しているメイドたちを見渡した。


「今日の現場です。シェリーナは第五街区のストマス様宅で通常業務です」

「はい!」

「レオリアは……」


 俺は一人一人の名前を呼び、予定を伝えた。


「なお、リリアは第三街区のセルジール様宅へ直接向かってます。朝礼は以上です。今日も一日よろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします」」」


 朝礼を終え自席に戻ると、俺の机の左正面に座るエリザベータさんが、こちらに視線を向けていた。


「ねえ、オリハルト君」

「な、なんでしょうか?」


 このメイド課に異動して一か月。

 未だにエリザベータさんとの会話は緊張する。


「今朝の新聞は読んだのかしら?」

「す、すみません。今朝は読む時間がなくて……」

「はあ、まったく……」


 溜め息をつくエリザベータさんの背後を、トレーを持ったアリッサさんが通り過ぎた。

 いつものように、優しい笑みを浮かべている。


「課長、コーヒーです。それと今朝の新聞です」

「あ、ありがとうございます」


 アリッサさんが、湯気がのぼるコーヒーカップを机に置いてくれた。

 落ち着いた香ばしい匂いが鼻をくすぐる。

 俺はカップを手に取り、目を閉じて芳醇な香りを楽しむ。


「アリッサは甘いんだから。コーヒーくらい自分で淹れさせなさいよ」

「ふふ、いいじゃないですか。それに、課長は私のコーヒーを美味しいと言ってくださるので」

「もう、仕方ないわね。オリハルト君、そのキモい顔をやめて、新聞の三ページ目を見なさい」


 香りをかいだだけでキモいと言われてしまう俺って……。


 エリザベータさんは、自分で紅茶を淹れていた。

 そして、高級そうなティーカップを手に取る。

 あまりにも優雅な所作に目を奪われそうになりながらも、俺は言われた通り三ページ目を開く。


「第三街区で連続放火の可能性?」

「今日のリリアの現場は?」

「第三街区のセルジール様……」

「リリアに万が一のことがあったら、君はどうするつもり?」

「そ、そうですね。今日は迎えに行きます」

「そうしなさい。あの子に何かあったら大変よ」


 俺に厳しいエリザベータさんだが、同僚にはとても優しい。


「エリザベータさん、ありがとうございます」


 エリザベータさんは俺の言葉に反応せず、自分の書類作業を始めていた。

 俺は新聞に視線を落とす。


「第三街区で五件の火災。放火の可能性が高く騎士団が捜査中。火災の発生は深夜。逃げ遅れたことで死者七名、重傷者八名……か。被害が大きすぎるぞ」


 リリアの現場は夕方までだ。

 深夜になることはないが、念には念を入れたい。


 ◇◇◇


 リリアはメイド課に寄らず、現場である第三街区行きの馬車に揺られていた。

 第三街区は高級住宅街として知られており、重厚な石造りの屋敷が立ち並ぶ。


「本当に大きな家ばかり」


 窓の外を眺めながら、リリアが呟いた。


 セルジール邸の近くにある停留所で、馬車を降りるリリア。

 メイド服をまとい、右手には革製のトランクケースと、左手にホウキを持つ。

 このトランクケースには、仕事道具が入っている。


 リリアのメイド服は半袖タイプだ。

 黒を基調としており、襟とカフス、胸元、スカートの裾が白い。

 スカートの長さは膝上と短いものの、白いタイツを履いている。

 エプロンは腰巻きタイプのものだ。

 全体的にフリルで装飾されており、可愛らしいデザインに仕上がっている。


「ん? あらら、もう待ってる。ふふ」


 リリアの到着が待ち遠しいとばかりに、依頼人であるセルジール夫妻は門の外に立っていた。

 リリアが大きく左手を振ると、夫妻は満面の笑みを浮かべながら手を振り返す。


「リリア嬢ちゃん、待っておったよ!」

「いらっしゃい、リリアちゃん!」


 リリアは夫妻の正面に立ち、姿勢を正して深くお辞儀をした。


「セルジール様、この度はご依頼いただき、誠にありがとうございます」

「リリア嬢ちゃん。いつものようにしておくれ」

「そうよ。リリアちゃん、普通にしてね」


 リリアは当然ながら仕事として礼儀をわきまえているが、この現場はもう長い。

 そして、これも顧客の要望として受け入れている。

 なによりリリア自身、この夫妻が好きだった。


「もう、分かったよ。いつものようにするね。ふふ」


 夫妻はリリアを屋敷に招き入れた。

 まるで最愛の孫を迎えたように、夫妻の足取りは軽い。


 ――


 依頼人は、主人のオーレ・セルジール、六十五歳。

 そして、妻のジョセ・セルジール、六十三歳。

 二人は貿易商として、一代で財を成した。

 オーレが六十歳を越えた機に、息子に家督を譲り、第三街区の外れに建つ、中規模の屋敷を購入して夫婦で移り住んだ。

 ここで余生を過ごすと決めている。


 第三街区は市街地と違い、比較的自然が多い。

 さらに、この付近は小高い山の麓にあり、標高が高く市街地を見渡せる。

 この素晴らしい景観が、高級住宅街たる所以だ。


「じゃあ、さっそく始めるね」


 リリアはまず室内の清掃を開始した。

 若いながら仕事はそつがない。

 夫妻は商売人としても、手を抜かないリリアの仕事ぶりも気に入っていた。


「ねえ、ジョセお婆ちゃん。ランチはどうするの? 私が作る?」

「お願いしてもいい?」

「もちろんだよ。作り置きもする?」

「ええ、お願いね。食材は用意してあるわよ」

「うん、ありがとう。二人が好きなキッシュを作っておくね」

「嬉しいわ」


 午前中は部屋の掃除を行い、ランチを作る。

 三人で食事を済ませた後は、キッチンを掃除しながら、夕飯と作り置きを用意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ