表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強メイドは今日も力で事件を解決する  〜国家戦力級の暴走メイドに奔走する新人課長。実はこいつが一番ヤバい件〜  作者: 犬斗
第三章 リリア・カルサス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/16

第14話 魔女と老人1

「ねえ、オリハルト君」

「は、はい。なんでしょうか?」


 書類に目を通していると、エリザベータさんが声をかけてきた。

 上品なのに迫力のある声質から、俺は嫌な予感しかしない。


「その黒い物体はなにかしら?」

「物体というか、黒猫です」

「見れば分かるわよ。バカなの? なぜここに黒猫がいるのか聞いてるのよ」


 そんな聞き方じゃなかったくせにと思うが、それを言うとまた面倒なことになる。


「実は先日の派遣でシェリーナが拾ってきて、リリアが祝福を与えたんです」

「あら、リリアが祝福を与えたのね。じゃあ問題ないわね」


 怒られると思ったが、意外とすんなり受け入れてくれた。


「あなた、リリアのことは知ってるでしょ?」

「リリアのこととは……?」

「喜怒哀楽の制限よ」


 今、メイド課には俺とエリザベータさんとアリッサさんしかいない。

 このメンバーなら話しても大丈夫だろう。


「はい。局長より注意事項を伺っています」

「魔女が祝福を与えると、黒猫はパートナーになるのよ。リリアの安定に役立つわ。あなたもいい判断したじゃない」

「えっ!」


 エリザベータさんが、俺を褒めた。

 信じられない……。

 こんなことが起こるなんて、俺は今日死ぬんだろうか……。


「なにその顔。ムカつくんだけど?」

「い、いえ。その……」

「死にたいの?」

「す、すみません……」


 困惑する俺を、まるで毛虫を見るような表情で睨みつけるエリザベータさん。

 せっかく褒められたのに、またしても怒らせてしまった。


「ふふふ、二人は仲がいいですね」

「やめてよ、アリッサ。キモいわ」


 アリッサさんが笑いながら、俺とエリザベータさんを見つめている。


 アリッサさんの席は、俺の右正面になる。

 エリザベータさんは、俺の左正面だ。

 つまりエリザベータさんの正面で、メイド課の年長組二人が、俺に最も近い席に座る。


 自席から離れたアリッサさんが、床に座るタルドを抱きかかえた。


「この猫ちゃんの名前は?」

「タルドです」

「いい名前ですね。よろしくね、タルド」

「ニャー!」


 タルドがアリッサさんの顔を見つめながら応えた。

 タルドは人間の言葉を大体理解しているそうだ。


「さて、オリハルト課長。新しい依頼です」


 タルドを抱えたままのアリッサさんから、書類を受け取った。

 俺はすぐさま書類に視線を落とす。


「老夫婦の自宅清掃ですか」

「はい。こちらのセルジールご夫妻は商人として成功した後に、家業をご子息に引き継ぎ、今は引退しておられます。以前は住み込みのメイドがいましたが、現在は年に数回、メイド課へご依頼してくださっています」

「そうだったんですね。では、常連さんということですか?」

「はい。課長が異動してからは初めてですが、もう二年ほどになります」

「では特に問題ないですね。担当を決めましょう」

「リリアちゃんです」

「え?」

「こちらはいつも、リリアちゃんを指名してくださっています」

「そうなんですね。リリアのスケジュールは大丈夫ですか?」

「問題ございません」

「では、リリアに伝えますね」

「はい。お願いしますニャー。ふふ」


 タルドを抱えながら、自席に戻るアリッサさん。

 美女と黒猫は絵になると思いながら眺めていると、エリザベータさんの視線に殺意がこもっていた。


 俺の心を読んでいるのだろうか……。


 ――


 窓の外に目を向けると、空が赤く染まっていた。


「もうこんな時間か。そろそろ戻ってくるかな」


 窓際に立ち、右手を挙げて背中を伸ばす。

 書類仕事は身体がなまりそうだ。

 少しずつメイド課に慣れてきたけど、今でも現場に戻りたい気持ちはある。


「ただいま戻りました」


 シェリーナを先頭に、メイドたちが派遣先から戻ってきた。


「やあ、みんなおかえり」


 続々と部屋に入るメイドたち。


「今日は疲れました」

「夕飯どうしようかしらー」

「ねえ、パフェ食べに行かない?」


 最後にリリアの姿を見つけた。


「あ、リリア。仕事の依頼なんだ。ひと段落ついたら、ミーティングルームに来てもらえるかな?」

「うん。分かった」


 リリアはメイド課で最も若い二十一歳だ。

 メイド課のみんなは比較的背が高い中で、リリアは小柄な体型で、身長も最も低い。

 大きな赤い瞳とは対称的な、水色のロングヘアを三つ編みにしたツインテールが特徴的。

 容姿だけ見ると、十代の学生と言われても違和感はない。


 ミーティングルームにリリアが入室してきた。


「疲れているところ申し訳ないね」

「ううん、大丈夫だよ」

「派遣の依頼なんだ」


 書類をテーブルに置くと、書類を手にすることなくリリアが頷いた。


「セルジール夫妻の依頼でしょ?」

「分かるのかい?」

「だってもう二年もやってるもん。そろそろかなって思ってたよ」

「じゃあ、仕事の内容も問題ないかな?」

「うん。大丈夫だよ。清掃と食事の用意、そして老夫婦の話し相手だからね」

「そうか。じゃあ、よろしく頼むよ」

「はーい」


 具体的な日にちを伝え、リリアとのミーティングを終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ