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ACシルク、試練の公開説明会(後編)

ACシルクの説明が終わった。

次は質疑応答の時間である。

サミーラは胃に痛みを感じ始めている。

(ACシルクの理事……明らかに言い過ぎよ。あれは村の男性ならだれでも一度は思っていたこと。

会場には、若い女性はあまりおらず、若い男性、家族層、高齢者層で構成されている。

高齢者層は夫婦で来ている層もいるけど、その男性からの攻撃はもう止められない。室長としてどうしたらいい?)

フレデリクは小声でサミーラに話しかけた。

「室長、もしもの時は強制で打ち切りますか?」

「あり得ない。もうここまで来てしまったら、村役場が逃げたことになる。」


レベッカが村人たちに向けて宣言する。

「では、これから質疑応答を始めます。ご質問がある方は挙手にてお願いします。お一人につき一度までとさせていただきます。」

とある50-60代くらいと思われる男性が手を挙げた。

「ご質問の前にお名前をお願いします。」

「ブルヨンだ。

あんた方、特に理事!

よそ者風情がこのシルク村をなめてんのか!?この村は今まで男が漁業か冒険者で村を守ってきたんだ!これからもそれは変わらん!黙ってろ!」

その言葉に次は若い男性たちからやじが飛ぶ。

「守ってきた?守ってきたなら何でこの村は男も女も村を出ていくんだ?」

「あんたは30年後のシルク村に責任をおえるのか!」

その時、草太は立ち上がった。

(落ち着け、俺。このアウロラ王国の文化水準は地球と比較すると19世紀くらいだ。

この程度の怒りをぶつけられるのは想定内だ)

「まず、ブルヨンさんに申し上げます。私たちは決してシルク村を舐めてなどいません。むしろ尊敬の念を持っています。

シルク村は漁師の方々のおかげで海の幸が豊富であり、観光資源の可能性に溢れていると考えます。

また、タオル産業。先ほど弊クラブの営業部長クラウディアが申し上げた通り既に横展開をするための技術と設備は整っています。この村は新しい産業を興すための可能性を秘めているのです。」

ブルヨンは言い返す。

「まやかしだ!」

するとすかさずレベッカが制止する。

「質問は一度までとさせていただいております。次の方。」

次に手を挙げたのは30代くらいの家族連れの男性だった。

「ラメリです。かなり夢があるご説明でした。ただ、資金源について伺いたい。スポンサー営業はどうなっているのですか?収支見込みは?」

この質問にはクラウディアが答える。

「まず、弊クラブのスポンサーとしては仕立て屋ファランス様と、スノリマ商会様と契約を交わしております。ここでは申し上げられませんが、他にもスポンサー営業は行っています。初年度は何とか黒字化は可能と考えています。」

相変わらず表情を変えず淡々と事実のみを答えるクラウディア。

次に、また年配の男性の質問となった。

後方で質疑応答の様子を見ていたサブリナは疑問に思った。

(さっきから男性ばかり。どうして?)

「タムじゃ。あんたら、さっき1年間で9万人来るとか言ったの。当然来年からなんだな?」

草太は答えた。

「われわれが加わる次シーズンのリーグは地域リーグからです。さすがにいきなり1部リーグからとはいけません。先ほどのクラウディアの説明においても少し未来の話と……」

しかし、そこでタムは話を遮り鬼の首を取ったような顔をして叫んだ。

「ほら見ろ!9万人なんか来ないじゃないか!この詐欺師たちめ!だいたい、たかが女が営業部長?そんな会社の言う事など戯言だ!」

その言葉に思わず草太は言い返す。

「今の言葉は撤回してください!弊クラブの社員を貶める言葉は聞き捨てなりません!」

その草太の言葉にナムの友人たちが堰を切ったように声を荒げる。

「いきなり1部リーグに行けるわけないだろ!」

「何も知らないんだな!」

その言葉にタムは言い返す。

「若造どもは黙ってろ!誰がこのシルク村を守ってきたと思ってる!儂らのおかげで今があるんだ!」

「お前ら若造もいつかは年寄りになるんだ!」

しかし、ナムの友人たちも引き下がらない。

「その頃にはシルク村は滅んでるわ!」

若者の男性と年配の男性たちのあいだでの罵り合いはエスカレートしていく。


サミーラは頭を抱えた。

―もう駄目だ、終わった―


その時、一人の女性が登壇席に登った。

草太もレベッカもサブリナもあっけにとられた。

その女性は、ナンシーだった。

「タム!年下は年上の言うことを聞けだって!?なら、私が今から言うことをよく聞くんだね!

私はあんたより2歳年上の65歳だ!」


その瞬間、体育館内が静まり返った。


「私たち女は、あんた達男に守られたなんて思ったことはないさ!」

そしてナンシーは続ける。

「私の息子は『カウカの厄災』の時の募兵に志願して首都防衛戦の戦地に行ったよ。そして息子は死んだ!」

さらに静まり返る体育館。

「次は夫だよ。泣きながら止める私を振り切って、『息子の仇を取る』とか言って、50を超えてたのに戦地に行ったよ。そして帰ってこなかった。タム、あんたはその時、何をしてた?

私たち女が避難所で炊き出しをしている後ろで、ただ震えてただけじゃないか!

それでもシルク村を守ったと言うなら、今すぐ夫と息子をここに連れてきておくれ……!」


次の瞬間、数は少ないがパチパチパチ、と拍手が聞こえてきた。

ナンシーと同世代の年配女性たちだ。

それに釣られるように、次に家族連れの母親たち、次に父親たち、そして若い男性たち、さらに数は少ないが、年配の男性も一部拍手を送った。


子どもたちは大人たちが拍手する訳が分からない、と言った様子だったが、とある幼い男の子が登壇席にのぼり、ナンシーの隣で思いっきり叫んだ。

「僕は、みんなとサッカーを見たい!」


こうしてACシルクの公開説明会は終わりを告げた。


体育館の控室に戻った瞬間、草太とレベッカは椅子に座り込んだ。

「つかれたぁ……」草太は呟いた。

そこにサブリナも控室に入ってきた。

「お疲れさまです。ソウタさん、レベッカ先輩、クラウディア部長、ナム監督。」

クラウディアは珍しくため息をついた。

「理事の説明の仕方、あれは何ですか?原稿も持たず壇上の上を歩いて手をふりまきながら語るなんて。事前練習のときは立って直立不動で話してただけですよね?謎すぎます。」

実は草太はその時、地球でのIT企業の新商品発表会のスピーチを思い起こしていた。すると勝手に手足が動いたのだ。

草太は、「ハハハ…」と笑ってごまかす。


後日、シルク村議会にて正式に廃校となったガンサ小学校の指定管理者の公募の期間を前倒しの上で打ち切り、ACシルクは正式にガンサ小学校の指定管理者となったのであった。

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