第八章「言葉の決闘《デュエル・オブ・センス》」
──時刻は真夜中。封印装置が崩壊したツッコミギルドの屋上。
そこに立つは、漆黒のローブに仮面の男──ノンセンスゼロ。
その周囲には、実体を持たない“言葉の幻影”たちがうごめいている。
「意味不明!」
「謎のテンション!」
「オチがない!!」
アデル(見上げながら)
「彼の周り……“構成されなかったボケ”たちが、漂ってる……!」
ハルキ
「ボケが素材のまま暴れてんのかよ!? 加工してから出せよ!!」
ノンセンスゼロ
「君のような“完成されたツッコミ”が、この世界の自由を縛る。
……今宵、すべての常識を、笑いで溶かす」
ハルキ
「おいこら、“笑い”ってそういうもんじゃねぇ!! “無秩序”に投げるもんじゃねぇんだよ!!」
*
“デュエル・オブ・センス”──開始。
それは、ツッコミとボケ、言葉の応酬による超次元バトル。
ノンセンスゼロ
「問う。世界とは、“意味があるから面白い”のか?
それとも、“面白いから意味が生まれる”のか?」
ハルキ
「どっちでもねぇよ!! “面白い”は“伝わる”からだ!!
一人で笑ってるだけじゃ、ギャグじゃねぇ、“事故”だろうが!!」
ノンセンスゼロ
「貴様のその言葉が、既にツッコミである限り……我がボケに、意味を与えている。
――つまり、“存在意義”だ」
ハルキ
「うるせぇ理屈だな!?
ならその帽子、どうして“ピザ生地”なんだよ!!!」
観客(ボケ幻影たち)
「うおおおおおッ!! ナイスツッコミぃぃぃ!!」
*
バトルは激化。
言葉の斬撃が、空間を裂き、常識のフレームを破壊していく。
ノンセンスゼロ
「君のような存在がいるから、ボケはボケとして成立する。
ならば私は、“君がいなければ完成しない”存在──!」
ハルキ
「そんな共依存、卒業させてやるよ。
俺は、“常識”という刃を背負ってるんだ!!」
“必殺技・ツッコミ奥義『概念ツッコミ・否定無双』!!”
巨大なツッコミエネルギーが天を貫く!
対象は、言葉・空間・価値観すべて──
ノンセンスゼロ
「グッ……! 貴様の言葉が……俺の存在を“正して”いく……!?」
空間が白く光り始め、幻影たちが霧のように消える。
ノンセンスゼロ
「ツッコミとは、秩序であり……優しさだったのか……」
ハルキ
「……ああ。
“面白い”ってのは、“共有する”もんだからな。
一人で突っ走るのは、ボケもツッコミも──寂しいんだよ」
そしてノンセンスゼロの仮面が、静かに落ちる。
そこにあったのは──
かつて、世界最強のツッコミ師と呼ばれた青年の顔だった。
ハルキ
「……!?」
ノンセンスゼロ(微笑んで)
「お前が来るのを、ずっと待っていたよ……。俺の“後継”──常識の使徒よ」
そして彼は光となって消えた。
夜が明け、街に、静かにツッコミの風が戻ってくる。
*
──翌朝。
アデル
「これで、世界にツッコミが戻りますね……!」
ハルキ(ぐったり)
「いやもう……どんだけのボケに囲まれてんだ俺……。
でも、ま、いいか……俺がツッコんでやるよ。世界の非常識、全部まとめてな!」
そして──
ギルドに新たな依頼が舞い込む。
タイトル:「次なるボケ、空から来たる」
アデル
「ハルキさん、空からボケって何ですか!? 流星ギャグとか!?」
ハルキ
「ツッコませる気満々だなお前らああああ!!!」
---
次回――
第九章「ボケ、宇宙より来たる」
宇宙ギャグ? 宇宙ツッコミ?
常識の壁は、地球圏を越える。