第一章:転生即、フルスロットルボケ地獄
『その日、世界がボケて、俺がツッコんだ。』
第一章:転生即、フルスロットルボケ地獄
目を覚ましたら、目の前にドラゴンがいた。
いや、正確には――。
「お主が今日から我が下僕か? よかろう、ではこのネクタイを巻いて見習いとする!」
――お前がしゃべるんかい。
混乱していた脳が、ツッコミとともにようやく回り始める。
ここはどこだ。俺は誰だ。ていうか何でドラゴンにネクタイ巻かれかけてんだ。
「……あの、ここはどこですか?」
「うむ、そなたが問うのも無理はない。ここは世界ランク第7位、ボケの国・オボケリアである!」
世界ランクって何だよ。あと堂々と名乗るな、そんな国。
「では自己紹介しよう。我はこの国の守護龍、《メイプル=ボケリアス=大福》! 愛称は“ぼくちゃん”である!」
「センスが三世代くらい前だな!?」
……いや、落ち着け俺。これは夢だ、たぶん。何かの悪い夢だ。昨日寝る前に見たコント番組のせいに違いない。
俺の名前は天城ハルキ、25歳。ブラック企業に心を折られ、帰宅中に横断歩道で盛大にトラックに轢かれた。よくあるやつだ。いわゆる――異世界転生ってやつ。
それ自体は受け入れよう。流行ってるしな、仕方ない。
でもな――。
「さぁ、そなたは今日から“世界のツッコミ役”として世界を救うのだ!」
「なんで俺だけ関西芸人みたいな職業なんだよ!」
選べるジョブ一覧に「戦士」「魔法使い」「聖職者」「ツッコミ」が並んでた瞬間、俺は真顔になった。
しかも説明文がこれだ。
【ツッコミ】:世界のバグ・ノイズ・ボケを修正する重要職。ツッコミがなければこの世界は崩壊します。】
いや、どんな設定だよ!
「ちなみにツッコミがいないと、魔王もボケたまま暴走して世界が崩壊するぞい!」
どんな構造の世界なんだここは!
「大丈夫。そなたの魂は選ばれた。前世で常識に溢れ、日々社内のギャグに冷静に対処し続けた――」
「ブラック企業の無茶ぶりをツッコんでただけだわ!」
ここまで全力でツッコミ入れてるのに、ドラゴンはひたすら得意げだ。
俺は思った。これはダメだ。世界がツッコまれ待ちしてる。
しかもこれ、たぶん一生続くぞ――。