新たなる腹痛の始まり
本屋から出たオリバーは、通りの反対側にあるアクセサリー店にメリアを探しに向かった。
店に入ると、壁から天井までびっしりとアクセサリーが並べられていた。ほとんどの商品に「女性専用」と書かれていたが、いくつか男性用のものも置かれている。アクセサリーの札にはそれぞれ効果が書かれていた。
「運アップ」「恋愛運アップ」「魅了確率アップ」……
(……魅了確率? これって何に使うんだ?)
男性用の方には「筋力アップ」「ダメージ耐性アップ」と、実用的な効果が多かった。
ぼんやりと眺めていたそのとき、肩を軽く突かれた。振り返ると、すぐにほっぺを突かれる。
「それで、魔導書でも見たの?」
振り向いた先にはメリアがいた。
「ま、魔導書は見てないけど……代わりに漫画があったよ!」
オリバーは嬉しそうに答えた。
「漫画があるの? 漫画家が転生したのかな?」
「店員さんがそう言ってたよ。他にもいろんな漫画があった!」
「へぇ〜」
メリアはあまり興味がなさそうに返事をした。
「メリアは何か買ったの?」
「まだ見てるとこ。オリバー、どっちがいいと思う?」
そう言ってメリアは二つのアクセサリーを見せてきた。リング系と蝶のイヤリングだ。
「そうだな……どっちもいいと思う。どっちも買えばいいじゃないか?」
「まー、そうね。安いし、両方買うか」
「オリバーは、買いたい漫画とかあった?」
「うーん、いっぱいあったからどれから買うか悩むよ。まあ、決めたら言うよ」
メリアはその後もいくつかアクセサリーを手に取り、買い物を終えると二人で店を出た。
「そろそろお昼になるね。食べたいものはある?」
「そうだな、この街でしか食べられないようなものがいいな」
「せっかく異世界に来たんだもんね。そういうの、食べたくなるよね」
そう言いながら、メリアは通りの先にある店を指さした。
「今日は、あのレストランにしよう」
オリバーが指差した先をよく見ると、そこはどう見てもレストランではなく、スイーツ店だった。
「メリア、ここ……どう見てもスイーツ店だけど」
「小さいことは気にしないの。さ、早く入ろう」
「えー……」
(肉が食いたかったのに……それに、なんか嫌な予感しかしない……)
そう思いつつも、オリバーは店に入った。
店内は木の机と椅子が並んだ、落ち着いた雰囲気のチェーン店のようだった。二人が席につくと、店員がメニューを持ってきた。
「ふふ、ありがとう」
「本日のおすすめは“ストロベリー・ザ・ワールド”です。いちごクリームと、中にはいちごの実が詰まったショートケーキになっております」
「二つお願いします。それとチーズケーキも。オリバーも好きなの頼んでいいわよ」
「じゃあ、チーズケーキを一つお願いします。……てか、なんでここに入ったの?」
「お腹が減ったからよ」
「お待たせしました。どうぞ、召し上がりください」
「って、早っ!」
運ばれてきたケーキは想像以上に大きかった。ホールケーキをそのままカットしたものが、12ピースほど皿に乗っている。
自分の分だけでも多いと思ったが、メリアが同じものを三皿頼んでいたことにオリバーはさらに驚いた。
「おっ……ジーザス……」
二人はもぐもぐとケーキを食べ始めた。
「けっこううまいな、これ」
「私のセンサーが反応したの。ここにはおいしいスイーツがあるってね」
ケーキを食べきった二人は、お腹をパンパンにしながら店を後にした。
ギルドに戻ると、タツミが机で本を読みながら待っており、アレックスはクエストボードを見ていた。
オリバーは二人に話しかけようとしたが――
「……うっ……」
腹がキュルキュルと鳴った。
オリバーは顔をしかめ、すぐさまギルドのトイレへ駆け込んだ。
そう、ケーキの食べすぎで腹を壊したのだった。
彼の新たな戦いは、ここから始まるのであった。