第43話 呑気な修行
オリバーとコズモは激しく戦っていた。
「はああああああああああっ——エアバースト!!」
「来い! どりゃああああああああああっ————!!」
オリバーは手の中に風の球を生み出し、それをコズモへ投げつける。
コズモは槍でそれを打ち返した。
オリバーは、かつてタツミが使った魔法を真似しているのだった。
隣で見ていたメリアは、呆れたように呟く。
(これ、完全に野球よね……)
厳しい訓練のはずが、いつの間にか野球の練習になっていた。
「ちょっとやめなさい!」
メリアは二人を止め、オリバーに空中浮遊のやり方を教える。
「そうよ。まずは“浮かせる”の」
「お、おう……わかった」
自信のない返事だった。
当然だ。オリバーは高所恐怖症なのである。
オリバーはコズモの手を握り、浮き上がろうとする。
しかし足は震えていた。
生まれたての子鹿のように、ガタガタと。
「アバババババババ———!」
その震えはコズモにも伝わる。
「真面目にやりなさい! オリバー!」
メリアが鋭くツッコむ。
(もう……緊張感ないんだから)
(友達が危ないのに呑気だなあ……)
(でも、これで少しは成長したかな。コズモとの戦闘は割と似ているし)
(このまま鍛えれば、きっと強くなる)
メリアは温かい目で、オリバーの修行を見守っていた。
⸻
—— 一方その頃。沈黙の教会の地下。
正体が露見したアンダーは、男たちに捕らえられていた。
風魔法で腕を拘束される。
「やめろ! 離せ!」
男たちを壁へ吹き飛ばし、部屋を抜け出そうとする。
扉を開き、一歩踏み出した瞬間——
後ろから足を引かれた。
集団の中の一人が魔法で枷と鎖を生み出し、アンダーの足に巻きつける。
「———逃がさねえよ!」
鎖が締まり、アンダーは動きを封じられた。
神父は、隣に立つシスター服の人物へ視線を向ける。
その意味を理解したのか、シスターは静かに頷いた。
そして神父は、奥の扉へと消えていった。
椅子に縛られたアンダーは、不安を押し殺す。
「……くっ!」
⸻
その頃、外では。
翔たちはレストランで食事をしていた。
「もぐっ……バレないといいな、兄貴」
「なーに、心配すんな。俺の作った人形は完璧だ」
「俺たちとそっくりだしな」
一方、教会の地下。
集会用の椅子に、二人の人物が座っている。
——動かない。
それは翔が作った藁人形だった。
彼らと同じ服とマスクを着せられている。
だが、その顔には。
へのへのもへじが描かれていた。




