第40話 タツミの恐怖
タツミは胸騒ぎを覚えた。
破られた服のまま、オリバーは地面に倒れている。
切り裂かれた傷口から血が流れ、タツミは回復薬を振りかけたが、それでも回復は遅く、血は止まらなかった。
そのとき、タツミの脳裏に転生前の記憶がよみがえる。
叔母と二人、田舎で静かに暮らしていた日々。
学校には馴染めず、穏やかな生活を送っていた。
だがある日、叔母は倒れ、病で亡くなった。
それ以来、タツミは孤独を恐れるようになった。
——もう二度と、一人になりたくない。
タツミはオリバーの傷を必死に押さえながら、大きく叫んだ。
「アレックス! 私のところに戻ってきて!」
すると、タツミの背後からアレックスが姿を現した。
アレックスは彼女の頭をそっと撫でる。
そしてオリバーの傷の深さを確認すると、彼を抱え上げ、森を抜けていった。
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——エルトード王国、王の部屋にて。
部屋にはエルトード王国の代理王と、デハーマ帝国の皇帝が向かい合って座っていた。
それぞれの背後には護衛が立ち、場を見守っている。
エルトード王国側には光の勇者ナタリア。
デハーマ帝国側には星の勇者と占い師が控えていた。
ナタリアは不思議そうに思う。
星の勇者は気楽そうにこちらへ手を振っていた。
隣に立つ占い師は、その勇者をたしなめるように小声で注意している。
口元はベールで隠されていたが、明らかに怒っている様子だった。
王と皇帝は、先日起きた「ある城が半壊した件」について話し合っていた。
王は話をはぐらかし、何も知らないと答え続ける。
その最中、ナタリアは王から時折、鋭い視線を向けられているのを感じていた。
皇帝は賠償金を求め、交渉を続ける。
長時間の話し合いの末、王は最後まで要求を拒否した。
疲れを見せた皇帝は、改めて交渉すると告げ、その場を後にする。
「頑固な奴め……犯人が光の勇者だと分かっているというのに」
「馬を用意しろ、コズモ」
「はい! ただちに用意いたします!」
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——その頃、デハーマ帝国の城・地下。
一人のメイドが首を絞められていた。
右手一本でメイドを持ち上げ、時の魔王は激しい怒りを露わにしている。
「うぐっ……ゆ……許してください……」
猫の獣人であるメイドは、必死に赦しを乞う。
しかし魔王はその言葉に耳を貸さず、彼女を壁へと投げ飛ばした。
「——グハッ!」
倒れたメイドは、自らの油断を深く後悔していた。
城内を掃除していた最中、突然空から光が降り注ぎ、城は半壊。
彼女は気絶し、目を覚ました時には——姪のエマがいなくなっていた。
時の魔王の姪を守る役目を任されていた自分が、何もできなかったことを悔やむ。
(何もできず、連れ去られるとは……)
「音茶よ。お前に任を与える」
「エマを連れ戻せ」
「そして邪魔をする者は、殺しても構わん」
「はっ……は、はい……ジオ様」
「必ず、この音茶がエマを連れ戻してまいります」
玉座に座る王は、音茶に重ねて釘を刺した。
「我を失望させるな、音茶……次はないぞ」
そして音茶はエルトード王国に向かう準備するのであった。
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