第39話 無茶の代償と、極意という名の切り札
——メリアの部屋。
ソファに座り、プリンを食べていると、メリアは嫌な予感を覚え、手を止めた。
(何、この心の圧迫は……)
メリアの心臓はドクン、ドクンと鼓動を早めていた。
外に出ようと立ち上がり、扉に手をかけた、その時——。
扉を開けると、アレックスが血塗れになったオリバーを抱えて立っていた。
「ウッ……嘘……オリバー!」
「一体、何があったの?」
メリアはすぐにオリバーの手当てをし、その様子を見守った。
タツミから事情を聞き、タツミとアレックスはアンダー救出の準備をするため、一旦メリアの部屋を出ていった。
しばらくしてオリバーが目を覚ますと、上半身には包帯が巻かれ、剣で受けた傷はすでに塞がれていた。
目の前には、不機嫌そうなメリアが立っている。
気づいた瞬間、彼女の指が額に迫った。
パチーン!
「アウッ!」
突然のデコピンに、オリバーは思わず声を上げた。
「な、何でデコピンしたの?」
「君がバカだからよ」
「無茶しすぎなのよ、あんたは」
「行動する前によく考えなさい、オリバー。
もしタツミや他の人に何かあったら——」
「君はどう思うのよ」
「……ごめん……やれると思ったんだ……」
「やれると思った、ね……でもね」
「君はまだ経験が浅いのよ。
そんな危険に飛び込んだら、いつか本当に死ぬわよ」
「……答えて、オリバー……君……」
「タツミのこと、好き?」
「い、いや……その……」
オリバーはひどく焦り、汗を流し始めた。
メリアは、その反応だけで答えを察した。
(君は、タツミちゃんの顔を見てないのよ、オリバー)
「彼女は心配していたのよ」
メリアはオリバーの顔に近づき、耳元で囁く。
「大罪よ。女の子を泣かせたり、心配させたりするのは」
「お、おう……分かった」
オリバーは立ち上がり、壊れた槍を探し始めた。
「探し物? オリバー」
「壊れた槍とか、持って来なかった?」
「持って来てないわよ」
「代わりに……アレックスが君のために、これを」
メリアは布に包まれた剣を取り出した。
「アレックスは、君がよく武器を壊すから、耐久性に優れたものを渡したの」
「あとで、ちゃんと感謝しなさいよ」
「うん、わかった」
「オリバー、はい、これ」
「うん?」
「あ、俺の服」
メリアは、破れていたオリバーの服を縫い、洗濯までしていた。
「ありがとう、メリア」
オリバーが外へ出ようとすると、メリアがそれを制止した。
「待ちなさい。タツミちゃんから話を聞いたけど」
「相手、『極意』って言ってたのよね」
「あっ、そうだった。つい忘れてた、そのこと」
「“つい”って、君……」
「あれって何? メリア」
「極意はね、転生者の最後の切り札よ」
「能力は人それぞれだけど、その人の力の結晶みたいなもの」
「君が相手をしたのは、回避能力を持った転生者ね」
「極意を持つ転生者を相手にするなんて……これは悩ましいわね」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
少しずつ物語が動き始め、世界の危険さも見えてきました。
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