第38話 奪われたアンダー、斬られたオリバー
タツミは大きく叫んだ。
「だ、大丈夫、オリバー!」
我塁はオリバーの攻撃を回避し、反撃の肘打ちをオリバーに当てた。
「グハッ——!!」
「はぁ、はぁ……」
鋭い痛みが走り、息切れも起こす。
一方、アンダーは自分の手を押さえ、受けた痛みに耐えていた。
アンダーのナックルは少し凹み、圧迫されている。
「何すんだよ……ううぅ……。あんた、回避役じゃないのか?」
その質問に、翔は冷静に、当たり前のように返事をした。
「ああ、よく勘違いされるよ」
翔が膝をついているアンダーに触れようとした、その時。
タツミは杖を振り、彼の顔に水をかけた。
「………………」
翔は沈黙したが、内心では酷く怒っていた。
自慢の髪を台無しにされたこと、そしてアンダーの手を見ようとしたところを邪魔されたことに、タツミを鋭く睨みつける。
翔は地面に落ちていた小石を拾い、空へ放った。
次の瞬間、剣が閃く。
小石は凄まじい速度で飛び、タツミの杖を砕いた。
———!!
壊れた杖を見て、タツミは思わず腰を抜かした。
もし手や肩に当たっていたら、貫かれていただろう。
——いや、それ以上に恐ろしいのは、もし顔に当たっていたら……。
翔は冷たい声と鋭い視線で、タツミに告げる。
「俺の邪魔をするな」
息切れから回復したオリバーは、タツミに手を差し伸べた。
「立てる?」
オリバーが様子を伺うと、タツミはまだ地面に膝をついたままだった。
アンダーは翔から距離を取り、オリバーの近くへ来る。
アンダーの手が酷く痛んでいるのを見て、オリバーは何かを思いついた。
オリバーはタツミに近づき、尋ねる。
「タツミ、あの回復薬はまだある?」
「……あ……あるよ」
タツミはカバンから、以前オリバーに飲ませたことのある回復薬を取り出した。
オリバーはそれをアンダーに渡し、回復させる。
その間——
盗賊は翔の耳元に近づき、囁いた。
翔は嫌そうな顔をしながら返事をする。
「……わかった。荷物を取れ」
「正直、君を連れて行きたいけど、教会の連中はうるさいんだよな」
「うむ……。持って帰ってもいいかな?」
翔は指を差しながら、弟の我塁に尋ねた。
「ダメだよ、兄貴。教会の連中に怒られるって」
「だけどなぁ……こんな美女、逃したくないよ」
「一旦、月夜の都に戻ってからにしよう、兄貴」
「………………やっぱり連れて行く」
アンダーは立ち上がり、構えようとする。
だが翔は一瞬で背後に回り、首元を叩いて気絶させた。
オリバーは反応し、槍を突き出す。
「彼女を離せ!」
しかし、我塁がその前に立ちはだかる。
「させない!
回避の極意‼︎
『触されぬ者』」
槍は確かに我塁を突いた。
だが、血は一滴も流れなかった。
我塁の身体は、全身を黒い霧に包まれている。
彼は剣を構え、大きく斜めに振り下ろした。
オリバーの服とともに槍が斬られ、鋭い痛みと同時に血が吹き出す。
——しまった!
後ろで見ていたタツミは、オリバーを心配して叫んだ。
「オリバー!!!」
斬られたオリバーは、意識が飛ぶ。
「うっ———!!」
タツミはオリバーの傷を押さえながら、必死に呼びかける。
——起きて、オリバー!
そしてアンダーを攫い、翔たちはオリバーとタツミを残して、その場を去っていった。
「都へ行くぞ、弟よ」
「だから兄貴、女は置いていけって」
盗賊は荷物を抱え、不安を感じながらも、二人の後を追っていった。
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