仲間と再会
前回までのあらすじ
ナタリアはサボンを連れてデハーマ帝国へと足を踏み入れた。
サボンは仲間を探すため、かつて仲間たちが偵察していた城へと向かう。
しかし、その城はすでに半壊していた――。
⸻城の地下、研究室。
エマは高笑いを上げていた。
「ハッハッハッハ! ついに完成したわ! これで全員、血祭りにしてやる!」
彼女の研究室は地上の振動すら届かないほど深く、オーガたちは上層で侵入者の足止めに追われていた。
知らせる暇もない。
室内では、三つの手術台にサボンの仲間が拘束され、注射器で血を抜かれていた。
部屋の奥には巨大な浴槽がいくつも並び、どれも赤黒い液体で満たされている。
「ふふん、やっと完成報告ができるわね。」
エマは手を止め、ぬいぐるみが並ぶ部屋へ向かう。
木製の人形の頭に手を置き、魔力を流し込んだ。
「伯父様! 完成したよーん!」
『……やっとか。こちらに輸送してくれ。これで復讐が果たせる……』
暗がりの奥で、木製の人形がゆっくりとうなずいた。
⸻
その頃、ナタリアは廊下で魔族を次々と斬り伏せていた。
「ふんっ! はああっ!」
サボンは少し後ろをついていく。
床に転がるのは切り裂かれた魔物たち。
ナタリアの剣筋には、憎悪と冷徹さが滲んでいた。
「……この人、殺気がすごい。」
サボンは小声でつぶやいた。
そのとき、弓を構えたゴブリンが怯え、エマのもとへ逃げ出した。
扉を開けた瞬間、ゴブリンの身体は真っ二つに裂かれた。
――ナタリアの剣だった。
エマはその気配を察し、身構える。
サボンとナタリアが研究室に踏み込む。
手術台には、血を抜かれたサボンの仲間たちが拘束されていた。
「みんな……!」
サボンは駆け寄り、拘束具を外していく。
その目は涙で滲んでいた。
「すまない……私が、もっと力があれば……」
「いいのよ。あなたは救助に来てくれた。それだけで十分。」
仲間の声に、サボンはかすかに笑った。
一方、ナタリアは室内を探っていた。
奥にはさらに地下へ続く通路と、赤黒い液体の詰まった浴槽が並ぶ空間が広がっていた。
そこで、エマを見つける。
ナタリアは言葉を交わす前に、腰の聖剣を投げ放った。
剣は地面に突き刺さり、エマの足元をかすめた。
「!? あんた……」
「光の勇者か。まさかまだ現役だったとはね。」
「伯父様を探してるなら残念。ここにはいないわよ。」
その言葉に、ナタリアの殺気がすっと消える。
「……そうか。わかった。」
しかし、エマは小さくつぶやいた。
「クイック召喚。」
ナタリアの背後に、巨大な影のモンスターが現れる。
ナタリアはすぐに光剣を生成し、斬撃を受け止めた。
「後ろからとは卑怯ね。」
「あら、奇襲は無理だったか。」
ナタリアは光剣をもう一振り生み出し、二刀流の構えで影を真っ二つに切り裂いた。
飛び散る闇の液体が床を染める。
「このモンスター……何者?」
「あら、気になっちゃう? でも残念、私はそういう説明しない魔族なの。」
エマは笑いながら詠唱を始めた。
「出でよ、シャドウブラッド兵たち! ――大魔法《S・B・マルチフィーバー》!」
床と天井に魔法陣が広がり、次々と影の兵たちが出現する。
ナタリアは光の剣を構え、冷たい目で周囲を見渡した。
「……来い。」
一斉に襲いかかるモンスターたち。
だが、ナタリアの剣は止まらなかった。
斬り伏せ、貫き、返り血を浴びながら、彼女はただ前へ進んだ。
その間に、エマは背後の扉へ向かって逃げ出した。
だが、取っ手に手をかけた瞬間――背中に鋭い痛みが走る。
「え何これ……針?」
足に力が入らず、その場に崩れ落ちる。
振り返ると、そこには鋭い目で見下ろすサボンの姿があった。
「逃させないわよ。」
エマは息を呑む。
さっきまで誰もいなかったはずの場所に、彼女が立っていた。
ステルスの才能――まるで影そのもののように。
返す言葉も出ず、エマの視界が暗転していった。
漫画の表紙を完成しました
Xで後で投稿します
小説を読んでいいねと思ったらブクマお願いします




