暗闇の光剣
静かな夜——。
一人の人物が王国へと飛んでいた。
それは、光の女勇者ナタリアだった。
その頃、彼女は明日の準備を済ませるため、自宅へと戻っていた。
―――そして朝。
ナタリアはまだ眠っているサボンを抱え、馬車へと乗せた。
半日かけて辿り着いた先は、デハーマ帝国。
目的地に着いた瞬間、ナタリアはサボンを軽く揺すった。
「ZZZ……」
「起きろ、サボン」
「はっ!? はいっ!?」
寝ぼけながらも装備を整えるサボン。
マントをつけ終えたところで、ようやく口を開いた。
「ナタリアさん……何時ごろから、始めるんですか?」
「何時って――今行くのよ」
「えっ?」
「今よ」
あっさり言い切ると、ナタリアは真っ昼間の街道を歩き出した。
サボンは偵察していた建物の上から、遠くに見える巨大な城を見つめる。
手をギュッと握りしめ、覚悟を決めた。
「あの城ですね」
「ええ、ここが怪しくて……」
と説明を始めようとした瞬間――ナタリアの姿が消えた。
「え? いない!?」
次に見えた時、彼女はすでに城の上空にいた。
剣を構え、静かに呟く。
「――イルミネーションズ」
瞬間、剣から放たれた複数の光柱が、空を貫いて降り注いだ。
城が、光に包まれ、轟音とともに崩れ落ちていく。
その光景を見たサボンは、口を開けたまま白目を剥いていた。
ナタリアはゆっくりと戻ってきて、晴れやかな顔で一言。
「……ちょっとだけ崩したわ」
「ちょっと!? やりすぎでしょーーー!!」
「彼女たちがいたらどうするんですか!」
「安心しなさい」
「人の魔力が感じられなかった。それに――」
「城の地下に、広い空間があったわ。おそらく彼女たちはそこにいる」
――その頃、地下では。
鐘の音が鳴り響いていた。
オーガが廊下を駆け抜けながら叫ぶ。
「襲撃だ! 皆の者、戦闘に備えろ!!」
地下には無数の魔族と魔物たち。
オーガ、ゴブリン、大型の狼や猪――それぞれが武器を構え、陣を張る。
リーダー格のオーガが偵察隊を送ったが、誰も戻ってこなかった。
次の瞬間、地響きとともに強風が吹き荒れ、松明の炎が次々と消えていく。
地上へ続く廊下は暗闇に沈み、魔族たちは冷や汗を流した。
「来るぞ……」
闇の中から、一本の光る剣が浮かび上がる。
弓を持つゴブリンたちが一斉に矢を放つ。
だがすべての矢は、光剣に弾かれた。
突撃したオーガとゴブリンの群れも、一瞬で切り伏せられる。
そして――光の中から、ナタリアが現れた。
彼女の瞳は氷のように冷たく、
その眼差しを受けた者たちは、戦う間もなく息絶えていく。
それが、彼らが見た最後の光景だった。
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