第23話 厄介なメイド
「はあっ……はあっ……!」
次々と現れて襲いかかってくるゾンビの群れに、オリバーは消耗を強いられ、息が切れそうになりながらも剣を握りしめて戦い続けていた。
メリアは肩越しに援護射撃を放ち、アレックスはタツミを守りながら迫るゾンビやスケルトンを切り伏せていた。
タツミは怯えながらも必死に風魔法を詠唱し、圧縮した風弾を撃ち込んで敵を寄せつけまいとする。
「うわわっ、来ないで!」
放たれた小さな風弾はゾンビに触れた瞬間、爆弾のように破裂し、爆風で周囲のスケルトンを吹き飛ばした。
その様子を土の丘から見下ろしていたのは、ガルミとディーネの二人だった。
「ご主人様、我々も参戦いたしますか」
「うーむ……そうだな。君はあのオタクを相手にしてくれ。俺はあの騎士をやる」
「かしこまりました」
ディーネはバッグから鉄製の杖を取り出し、地面をトントンと叩く。すると土の斜面が変形し、滑り台のように伸びていった。
彼女は滑り台を立ったまま滑り降り、スケートボードのように疾走すると、最後に軽やかに跳躍し、オリバーの近くに着地した。
周囲のゾンビを退けながら、ディーネは涼しい顔で自己紹介をする。
「ちょっと君、邪魔です」
そう言ってスケルトンの頭を掴み、森の奥へと放り投げた。
「コホンッ……初めまして。ゾンビメイドのディーネと申します」
「おう……初めまして。俺はオリバー」
オリバーは緊張からすぐには攻撃に移れず、彼女が手にした杖へと視線を注いだ。槍のように鋭い先端を持つ奇妙な杖だった。
その様子に気づいたメリアが小声で警告する。
「気をつけて。何をしてくるかわからないわ」
「ああ、わかってる」
その言葉を言い終わるより早く、ディーネが杖で地面を叩いた。
直後、オリバーの足元に深い穴が開く。
「うああああーー! またかよーーー!」
「えぇーーー!」
二人はそのまま暗闇へと吸い込まれていった。
「ふん、楽勝ね。さて、ご主人様は……」
一方そのころ、アレックスはガルミと対峙していた。
影から現れたガルミはタツミに向かって指を突きつけ、詠唱する。
「そこで眠れ! 《スリーピング・キャスト》!」
アレックスの後ろにいたタツミがその魔法の効果を受け、膝から崩れ落ちそうになる。
「うっ……あれ……なんだか……眠い……」
そのまま目を閉じ、意識を失った。
アレックスはとっさに彼女を腕で支え、地面にそっと寝かせる。守り切れなかった責任を胸に、剣を強く握りしめた。
次の瞬間、周囲のゾンビとスケルトンが一閃で薙ぎ払われ、消え去る。残るはガルミただ一人だった。
ガルミは影から大鎌を引き出し手に取ろうとしたが、その瞬間、アレックスの刃が彼の手首を切り落とした。
「っ!? お、お前……!」
だがガルミは平然と切り落とされた手を拾い上げ、元に戻して再生させる。
アレックスはその様を見て、人族ではないと悟る。構えを変え、より攻撃的な姿勢をとった。
二人の激しい攻防が始まる。
ガルミは影を使い、素早く攻撃をかわしながら切り込む。
アレックスは優雅にそれを受け流し、同時に反撃を加えていった。
彼の腕を三度も切り落とされたことで、ガルミの表情に苛立ちが浮かぶ。
「お前、なんで同じところばっかり切るんだよ! バカなのか!?」
問いかけても、アレックスは無言のまま容赦なく攻め続けた。
そこへディーネが現れ、アレックスへ加勢する。
「苦戦していますね、ご主人様」
アレックスは二人を同時に相手取ることとなった。
その頃、穴に落ちたオリバーとメリアは無事だった。
「うっ……重っ!」
「あと少しだ、メリア。あとちょっと我慢してくれ!」
メリアは妖精サイズから人間サイズへと変わり、オリバーを抱えて飛び上がり、地上へ戻った。
「はぁ、はぁ……マジで死ぬかと思った」
「確かに……私がいなければ危なかったわ」
「あれ、タツミは?」
辺りを見回したオリバーは、タツミが倒れ、アレックスが戦っているのを確認する。
「おい! 大丈夫か!」
「多分、眠らされてるだけね」
タツミの寝息が規則的になり、ついにはいびきをかき始めた。
「……大丈夫そうだな」
安心したオリバーはタツミをメリアに任せ、戦場へと駆け戻る。
「どうして……君、どうやって戻ってきたの?」とディーネが驚く。
「登っただけだ」
そう答えたオリバーの胸中には、メリアへの感謝が渦巻いていた。
「ご主人様、このまま近接で続けますか?」
「いや……捕虜は不要だ。あれを使うぞ。その後は最後の墓地に向かえ」
「かしこまりました。それと……彼を選ぶのですか?」
「ああ、彼にしよう」
ガルミはオリバーを見据えながら、不敵に笑った。
メリアはタツミを安全な場所へ運び、オリバーとアレックスは二人の敵を前に構え直した。
不穏な空気が漂い、戦場は次なる局面へと移ろうとしていた。
——次回「あいつは誰だ 」
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