クエスト.....墓荒らしの捕縛
前回のあらすじ
闘技大会の決勝戦で敗北したサボンは、深い疲労と怪我で医療室のベッドに横たわっていた。
目覚めた彼女は、自らの力不足を思い出し、悔しさから涙を流す。
隣にいたオリバーは、そんな彼女を慰めるように「一人で戦う必要はない、仲間を頼っていい」と声をかける。
サボンは戸惑いながらも、その言葉に少しだけ心を許すのだった。
一方、地下の闘技場では光の勇者ナタリアが圧倒的な力でマスター戦を制覇し、観客を震え上がらせていた。
その戦いを目にしたタツミとアレックスは、驚愕と畏怖を隠せない。
試合を終えたナタリアは、すぐに彼らと合流し、サボンのもとへ向かうのだった。
——医療室。
オリバーとサボンはフルーツのバスケットを食べ終え、少しだけ落ち着いた雰囲気になっていた。
「じゃ、君のために水を取ってくるよ」
そう言ってカーテンを抜けようとした瞬間、オリバーは何かにぶつかった。
「痛っ……」
冷たく硬い感触、そして同時に柔らかな感触が胸元に広がる。
恐る恐る目を開くと、そこにはナタリアの胸当て(チェインメイル)があった。
「ご、ごめん!」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫……」
赤面したオリバーは慌てて水を取りに行った。
室内にはサボンとナタリアだけが残る。
ナタリアは彼女の隣に腰を下ろし、優しい声で問いかけた。
「大丈夫?」
「ええ……大丈夫です……」
返事はしたものの、サボンの声にはまだ悔しさと罪悪感が混じっていた。
それを察したナタリアは、青い瞳を向けてそっとサボンの背を撫でる。
「今は休んで。明日には君の仲間を取り戻す」
確信に満ちた言葉。しかしサボンはすでに眠りについており、その声は届いていなかった。
やがて戻ってきたオリバーたちにナタリアは「静かに」と合図を送り、一同は眠るサボンを起こさぬよう、フルーツの追加をそっとベッド脇に置いた。
その後の会話で、オリバーは勇気を出して切り出す。
「ナタリアさん! 俺を弟子にしてください!」
突然の願いにナタリアは面食らったが、視線をそらしながら小さく首を振る。
「悪いけど、今は弟子は取っていないの」
しょんぼりするオリバー。しかし諦めきれずに顔を近づけて懇願する。
「おねがい、ちょっとだけでも!」
「うっ……近い」
困り顔のナタリアを見かねたメリアが後ろからオリバーの耳を引っ張った。
「コラッ! 相手を困らせないの!」
「うおー、やめろー!」
その隙にナタリアはアレックスから紙を受け取り、サボンへのメモを残して医療室を後にした。
「って、ナタリアが消えた!?」
驚くオリバーの肩をアレックスが叩き、ノートに「光の勇者なら出ていった」とだけ書いて見せた。
その後、眠るタツミを見て一同は静かに外へ出る。
「これからどうする? クエストに出るか?」
オリバーの提案に、タツミとアレックスは相談の末に賛同した。
ギルドで掲示板を確認すると、新しい依頼が貼られていた。
——墓荒らしの捕縛。
数日前から王国郊外の墓地を荒らす者の正体を暴き、捕えること。
「これでいいか」
深く考えず依頼を受けたオリバーたちは、メリアの提案で最寄りの墓地へ向かうことにした。
森を抜けると、霧が立ち込める墓地にたどり着く。
そこでオリバーは人影を見つけ、声をかけた。
「おーい、君! 墓地で何をしている?」
肩に手をかけた瞬間、その感触が違うことに気づく。
振り返った「人影」は、骸骨だった。
次回 ——「死の魔王ガルミ・シーマ」




