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エスペーロ•ケ•ナンオピオラ 俺はそれでも頑張る   作者: ケロタコス


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グランドアリーナデシーザー編:それでも力不足

——翌日

ビギナークラス大会が終わり、ついにチャレンジャー戦が始まった。

グランドアリーナ・デシーザーの観客席はぎっしり満員だ。


チャレンジャー戦はビギナー戦と違い、参加者が多い。

そのため方式はバトルロイヤルとなっていた。


オリバーたちはサボンの試合を観に来たが、席は一番遠い位置しか取れなかった。


「うーん……人が多いですね」

「サボン、もう出てるのかな。まあ、多分透明化してるだろうな」


「透明化ができるんですね。他には特徴とかあります?」

「そうだな、黒い服に黒髪、あと……かっこいいマントを着てる」

「……それ、透明化してたら全然意味ないじゃないですか」

「……あっ」


オリバーとタツミは双眼鏡で必死に探していたが、当然見つからない。


横でメリアがため息まじりに言う。

「オリバー、多分探すのは無理よ。すでに透明なんだから」

「そ、そうか……確かに!」


仕方なくサボンを探すのは諦め、代わりに周りの参加者たちを見てみる。


冒険者や転生者、さまざまな個性を持つ者たちが入り乱れていた。

その中で、ひときわオリバーの目を引いた人物がいた。


ひとりだけ違う空気をまとった女性。

モヒカンに変わったガスマスク、黒を基調としたパンク調の服装。

そして手には黒いトンファー。


「なんか一人だけ雰囲気が違うな……」

気になったタツミも双眼鏡を向ける。

「……確かに。あの人だけ服装が現代的ですね」


——戦闘エリアでは。


オリバーが戦ったときは四角い区画だけだったが、今回は闘技場全体を使うようだ。


参加者たちの腕にはブレスレットがつけられており、

体力が尽きるか気絶すると自動的に医療班の元へ転送される仕組みになっている。


すでに戦いは始まっており、多くの冒険者たちが次々と弾き飛ばされ、転送されていた。


観客席は魔法のバリアで保護されており、破片や衝撃が飛んでくる心配はない。


サボンは透明化したまま、数が減るのをじっと待っていた。


次々と参加者が倒れ、観客席は大いに盛り上がっていた。


その中でも、モヒカンにガスマスクの女が目立っていた。

彼女は黒いトンファーを振るい、冒険者たちを次々と薙ぎ払っていく。


気づけば、五十人以上いた参加者は十人にまで減っていた。


「……サボンは見つかった?」

「いや、まだ……」

オリバーとタツミは双眼鏡を手に必死に探す。だが姿は見えない。


——実況席。

「さぁ! 残り十名! しかしまだ姿を見せていない謎の参加者がいます! その名も“サボン”! いったいどこに隠れているのか!? 観客の皆さん、探してみてください!」

エキドナが興奮気味に叫ぶ。


隣のナタリアはジト目で戦場を見ながら、ため息。

「……探しても無駄よ。透明なんだから」

「おっとぉ〜! さすが光の勇者ナタリアさん! 冷静な解説ありがとうございます!」

「別に解説してるつもりはないんだけど」


観客席に笑いが起きた。


その間にも冒険者たちは最後の力を振り絞り、ガスマスクの女に魔法を浴びせる。

「サンダライズビーム!」

「エアクラッシュ!」

「ファイアバーン!」


しかし女は素早く身を翻し、全て回避。

「無駄だ……」

そう呟き、残りの冒険者たちを一気に叩き伏せた。


観客席から大歓声。

だが——勝利のゴングは鳴らなかった。


女が訝しげに振り返った瞬間、背後から腕が伸びた。

「なっ……!」


サボンだ。

透明化を解き、首を締め上げる。


「き、貴様ぁ!」

女は必死にもがき、サボンを前に投げ飛ばす。

サボンは空中で体勢を立て直し、煙玉を投げつけた。


白煙が視界を覆う。

そこから無数の針が飛ぶ。


「チッ……!」

女は腕の鉄製ブレスレットで弾いた。

だが数本はかすめ、肌に浅く突き刺さった。


「うざいわね、あんた!」

女は怒声を上げ、マスクの装置を起動。

チューブから薬品を吸い込み、次の瞬間、その目が狂気に染まった。


——実況席。

「出たぁぁぁ! ガスマスクの女ジュリア選手の切り札! 通称“パフューム・ブースト”! 吸い込んだ香水で戦闘力を爆発的に強化! これは危険です!」

「確かに危険ね」

「おっと、ナタリアさん一言! さすが解説がシンプルゥ!」


観客席はどよめく。


凶暴化したジュリアは地面にトンファーを突き立て、地面を割った。

轟音とともに煙が吹き飛び、戦場が再び視界にさらされる。


「……ッ!」

サボンは割れた岩陰に身を伏せていた。だが透明化は魔力の消耗で解けていた。


直感で居場所を察知したジュリアが跳躍。

「そこだぁぁッ!」

トンファーを叩きつける。


サボンは間一髪で避け、分身を展開。

「……うつせみの術!」


だが分身たちは次々と叩き潰される。

その隙にサボンは跳躍し、空中から針の雨を放った。


「チッ……!」

ジュリアはトンファーで払い落とすが、数本が体に突き刺さった。

それでも構わず、さらに狂気を増し、サボンの眼前に迫る。


トンファーが胸を狙う。

サボンは腕を交差して受け止めるが、その一撃で壁まで吹き飛ばされた。


「サボンッ!」

観客席からオリバーが叫ぶ。


壁に叩きつけられ、地面に倒れ込むサボン。

ジュリアは黒炎をトンファーに纏わせ、頭を狙って振り下ろした。


——その瞬間。


「殺傷は禁止よ」


ナタリアが実況席から姿を消し、サボンとジュリアの間に現れていた。

光の魔力を纏った片手で攻撃を受け止め、衝撃波でジュリアを吹き飛ばす。


観客席が一斉に沸き立つ。

エキドナがマイクを握り叫ぶ。

「試合終了ォォォ! 優勝はジュリア選手! サボンも健闘しましたが、ここで敗退です! いやぁ、すごい試合でしたね、ナタリアさん!」

「……まぁ、悪くはなかったと思う」


こうしてチャレンジャー戦は幕を閉じた。

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