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エスペーロ•ケ•ナンオピオラ 俺はそれでも頑張る   作者: ケロタコス


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グランドアリーナデシーザー編:罠にかかったオリバー

前回のあらすじ

オリバーは闘技場に出場することになり、そこでサボンや光の勇者ナタリアと出会った。翌日、ビギナー戦が開催される。



その夜——

タツミとアレックスと別れたオリバーは、メリアの部屋に戻ってきて、翌日の試合について話していた。


「へぇー、それで参加することになったんだ? しかも明日って、ちょっと急じゃないか?」

メリアはスマホの画面を眺めながら軽く呟いた。


「少しは訓練してからの方がいいと思うけど……」


オリバーは胸を張り、にっこり笑った。

「勢いが一番だろ! やってみなきゃわからないさ!」


メリアは内心でため息をついた。

(本当にそれで大丈夫なのかしら……)


しかし、彼の服には特別に強化をかけてある。

物理攻撃への耐性に加え、魔法耐性と精神干渉耐性も高めに設定している。

少なくとも一撃で倒れることはないはずだ。


「それに、オリバーは最近ずいぶん強くなったし……」

そう自分に言い聞かせるようにメリアは呟いた。



翌日。

グランド・アリーナ・デ・シーザーは、普段の賑わいが嘘のように静かだった。

新人大会は、メインの上位ランク戦の前座として開催されているため、観客はほとんどいない。


アレックス、タツミ、メリア、そして光の勇者ナタリアだけが、ぽつんと客席に座っている。


他の観客は明日の本命の試合を楽しみにしているため、誰も新人大会には興味を示さなかった。


参加選手は六人。皆、闘技場の中央にある四角い戦闘エリアの前で待機している。


サイドポニーテールの女性実況者、マキエナちゃんが明るく声を張り上げる。

「はーい! みなさんこんにちは! 三日後に十八歳になる実況者、マキエナちゃんでーす!」


彼女は軽快な身振りを交え、元気いっぱいに挨拶した。


「さて! ビギナーの試合、早速はじめていきましょう!」


紹介が始まる。

「左側っ! やたらニコニコしている新人冒険者、奈伊藤オリバー選手!」


オリバーは照れながらも観客席にタツミやメリアたちに向かって手を振る。


「右側は……転生者らしい、変な名前の丸出屑選手!」


軽く会場がざわつくが、観客席は相変わらず静かだ。


「それでは、両者とも指定の武器を取り、構えてください!」


コングが鳴り、二人は鉄の棒を手に取った。


丸出屑はにこやかに手を差し出す。

「やあ、こんにちは。君も転生者かい? 正々堂々と戦おうじゃないか」


片手の手袋を外す。


オリバーも笑いながら手袋を外し、握手を交わした——その瞬間。


ドクン。

視界がゆらぎ、体が重くなり、膝がガクッと崩れる。


——眠気が全身を覆い、意識が遠のいていった。


そのまま倒れこんでしまう。



観客席。

メリアは驚いて飲み物を思わず吹き出した。

「ぶっ……げほっ! な、なに今の!?」


慌てて「鑑定眼」を発動する。


【能力】触れた相手を無条件で眠らせる能力。


(……耐性を無視するなんて……これはやばいわ……)



タツミは、倒れたオリバーを見て一瞬目を疑った。

ピクリと動かないオリバーは起き上がる気配がなかった。

心臓が激しく鼓動し、頭の中が真っ白になった。


「……うそ……死んだ……?」


呟く声はほとんど聞こえないほど小さい。


体が震え、膝ががくりと崩れそうになるのを必死に堪え、手すりにしがみつく。


視線は倒れたオリバーから離れず、目に涙が溢れてくる。


「オ、オリバー……お願い……起きて……」


震える声で必死に呼びかける。


そんなタツミを見てアレックスは彼女の背中で慰めていた。



すると実況者マキエナが慌てて説明を入れる。

「えっと、皆さん! オリバー選手は……あの、眠っているだけです! 死んでなんかいません!」


「丸出屑選手の能力で眠らされたんですが、数分で目を覚ますと思いますのでご安心を!」


その言葉に少しだけタツミはほっと息をつく。



丸出屑は倒れたオリバーの背中を踏みつけながら、顔を歪ませて呟く。


「……外人目。お前らのせいで、俺の出世コースが台無しになったんだよ」



メリアはポケットからスマホを取り出し、丸出屑の名前を検索した。


過去の記録には、ひどいことばかりが並んでいた。


——大学受験の当日、友人の飲み物に睡眠薬を混ぜて試験を受けられなくした。


——睡眠障害のある親に薬を盛り、金を盗んだ。


——会社で上司の水筒に薬を仕掛けようとしたところ、外国人の同僚に見つかり通報された。


スクロールするたびに、彼の歪んだ笑顔がスマホの画面に浮かび上がる。


(……最低のクズ……)



新人大会は静かに、しかしどこか重苦しい空気のまま幕を開けた。


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