プロローグ
俺は不幸な人間だ。
「関東!頼んでた書類はどうした?!」太った老人の大声が響いた。俺の上司で、俺の幸せの最大の敵だ。
「す、すみません!今印刷しているところです!」今度は叫んだのは俺だ。人生に疲れ果て、母親と一緒に暮らしたいけどそうもいかない男だ。俺は関東明治|、22歳。去年大学を卒業して、いい人生を送ろうと誓ったのに、このクソな宇宙は全然違う計画を立てていたようだ。
最後に心から笑ったのは、会議中の作り笑い以外で...そうだな、オカルトの本を読んだときかな...10ヶ月前?ああ、大学のときだ。
実際、文句を言う理由はあんまりないんだよな?普通の市民である俺にとって、人生ってこんなもんだろ。金持ちが笑えるように働くのが、神様から与えられた義務なんだ。
「し、社長、書類はここに...」
「藤ヶ谷がもう印刷してくれたぞ!お前は本当に役立たずだな!お前の母親が頼み込んでくれなかったら、とっくに首にしてるところだ!」あの気持ち悪い太った老人が意地悪な笑みを浮かべながら言った。
これが金を稼いで食べていく唯一の方法じゃなかったら、俺は自分でこの豚野郎の魂を来世に送り込んでやるのに。
ああ、できればな...
やっと仕事が終わって、電車が混む前に駅に走った。座る場所が欲しかったんだ。だって、家まで二つの県をまたいで帰らなきゃいけないんだから。
「着いたらすぐ寝よう。そうすりゃ、おばあさんに席を譲れって言われないだろ」
電車に乗ったら運良く座れる場所を見つけて、考えずに座った。
「はぁ...あの呪われた時間を立ちっぱなしで過ごさなくて済むなんて...」
周りを素早く見回して、誰も俺の席を狙ってないか確認してから、目を閉じて寝ようとした。
でも、電車でよくあることだけど、両側の空いてる席に二人が座るのを感じた。無視して寝ようとし続けたけど、この呪われた二人は真ん中で寝てる人がいるのに、ずっとおしゃべりを続けることにしたみたいだ。
「マジで?」
「うん、マジだよ!」
「それで、その後どうしたの?」
「えっと、謝ったかな...?ここに上がってきてからのことはあんまり覚えてないんだ」
「俺もほとんど同じだったけど、謝らなかったぜ。むしろ罵詈雑言浴びせてやったんだ!」
「それでも...」
「くそっ、人が寝ようとしてるのが見えないのか?!」
ああ、最後に言ったのは俺だ。イラついたから正当防衛だよな?
「はぁ?お前誰だよ」金髪で青い目の小さな奴が言った。外国人かな?でも日本語上手いな...
「ヴァ、ヴァルク、その人に怒鳴らないで!」反対側から、ほとんど透き通るような肌と、濃い赤色の目と髪の女の子が言った。日本人?
「ユーリ、こんな失礼な奴を無視しちゃダメだろ!」チビが俺の顔を指差しながら言った。
変わった顔つきだけじゃなく、服装もかなり奇抜だった...「ヴァルク」とかいう奴は、フードを下ろした真っ白な種類のマントを着ていて、裸足みたいだった。
もう一人の「ユーリ」は、濃い赤の細部が入った黒いドレスを着て、赤いサンダルを履いているように見えた。
「なんだと?喧嘩売ってんのか、チビ野郎」俺はイライラして言った。
「チ、チビだと?!」
「ヴァ、ヴァルク、お願い...」
「ユーリ、黙ってろ!このクソ野郎に痛い目にあわせてやる!」
「はぁ?!かかってこいよ!」俺は立ち上がり、奴も同じようにした。胸にも届かないくらい小さかった...
「来いよ、来いよ!」
「ヴァ、ヴァルク...まだ電車の中だ...」
俺は奴を殴った。奴は床に倒れた。
「ああっ!」例のユーリが叫んだ。
俺はただ自分の席に座り直して、もう一度寝ようとした。幸い、今度は寝られた。
自分の駅に着いて目が覚めた。あの二人はもういなかった。ありがたいことに。頭がズキズキする中、駅を出て真っすぐ家に向かった。
少なくとも駅から家はそれほど遠くない。
アパートに着いて、ほとんど死にかけながら階段を上り、ドアに着いて開けた。
「人ってときどき変だよな...まあ、訴えられないといいけど...」目を閉じたまま、後ろのドアを閉めながら大きなため息をついた。
「それにしても...」目を開けながら言い始めた。「この街には... あれ、俺、電気つけっぱなしだったっけ?」
「いいえ、私がつけました」少し聞き覚えのある女性の声がバスルームのドアから聞こえてきた。手を拭きながら出てきた。「あ、すみません...トイレを使わせてもらいました...」
さっきの女の子だ...ユーリとかいう奴か?!
「な、何を...ま、まさか...」俺は混乱しすぎて、文を最後まで言えなかった。
「ああ、俺もいるぜ」イラつく声がリビングルームのドアから聞こえてきた。俺は渋々ドアまで行って、ゆっくり開けた。そしたらあのチビがソファーに座って、足をコーヒーテーブルに乗せていた。
「な、なんだよ?!お、お前ら泥棒か?!」
「ここに盗むものなんてねーだろ。冗談じゃねーぜ」
「ヴァルク!ホストに失礼だわ!」
「ホ、ホスト?!」
何が起こってるんだ?頭がおかしくなりそうだ...というか、もう数日前からおかしくなってたかもしれない。
「お前、夢の中でメッセージとか受け取ってないのか?」例のヴァルクが聞いてきた。
「正直言って、最近はちゃんと寝る時間もないんだよ...」
「うわ、可哀想に」
「ヴァルク!」
「事実だろ!」
「そんなことはどうでもいい!結局お前ら俺に何の用だ?!」俺はついに叫んだ。
二人はしばらく顔を見合わせて、誰が話すか決めているようだった。そして、どうやらユーリが負けたらしい。
「明治さん、私は真赤ユーリ、あちらはヴァルクです。私たちは神様から送られて、適切な行動の仕方を学ぶために来ました」
「神様から?」俺は信じられないくらい納得してしまった。俺はバカなんじゃないか。「お前ら何なんだ?天使か?」
「実は...」彼女は言い始め、ヴァルクを見た。ヴァルクは渋々立ち上がってユーリの隣に立ち、腕を組んだ。
「俺が天使だ」ヴァルクが言った。
「私は悪魔ですわ...」ユーリが言った。
「逆だ!」