10/30
(二)-7
「お前、それは本当か」
「ええ。でも、奥さん急いでいたみたいだったから、詳しい話は聞きそびれたけど」
「なんだ、それなら部屋を開けてもいいんだな」
「電話で聞いてみた?」
「ああ。でも出ないんだよ、奥さんも旦那さんも。しかも奥さんがそう言っていたのだろう」
そう言って管理人の旦那さんは、後ろに立っていた奥さんにそう告げて、有井たちの方へ向き直った。
「ということで、開けましょう。鍵をお貸しすることはできませんが、私が鍵を開けに行きますので」
そう言うと、管理人は鍵を取り出して管理人室から出てきた。
そうやって、有井たちは管理人さんの先導で、十一階にある依頼人の部屋へと向かった。
(続く)