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星なるダメ王子の物語  作者: クロス
第一章
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29 遠足への道中・エリカside



冬華達が別行動で遠足への目的地に向かっている同時刻、冬華達以外の生徒、エリカ達の乗っているバスも目的地に向かって走っていた。

バスの中はまるで神でも降臨したかのようなほど賑わい収拾がついていない。理由は言わずもがな。学校のマドンナ、妖精様と崇められている紅野エリカがバスに乗っているだけで女子除く男子生徒全員はもう大騒ぎだ。


「ああ〜。今日から紅野さんと一緒に遠足か〜。神はやはり我らの味方だった様だ」

「そりゃ間違いないぜ。同じバスでよかったとさえ思うね。俺今からでも死んでもいいわ」

「馬鹿、死ぬのはまだ早いぜ。遠足はまだこれからなんだからよ」

「だな。俺達は幸せもんだぜ」


そんな中、バスの一番後ろの席の真ん中に座っているエリカはバス内の空気に戸惑いながらも飽き飽きしていた。


(この間冬華くんが言っていたようにそんなに私と一緒なのは嬉しいものなのでしょうか・・・)


いつも学校でいる時と同じような笑顔と態度でいるが内心では落ち着かない。

そんな時、席の両隣から声をかけられる。


「エリカちゃん。お菓子、良かったら食べますか?エリカちゃんの好きなパチパチキャンディありますよ」

「普通の飴もにチョコもあるよ。あと子猫のマーチも」

「・・・エーちゃん。ゲームしよう、ゲーム」

「・・・・・・写真」

「はい、じゃあ飴を貰ってもいいですか?ゲームは乗り物酔いしないように適度にやりましょうね。写真を撮れるところは沢山あると思いますから・・・そうですね、向こうに着いたら皆で撮りましょうか」


エリカは四人の少女達に挟まれながらも全員の話を聞き逃す事なく聞いている。まるで聖徳太子を思わせる行動で会話を成立させていた。


エリカから見て一番右側に座ってお菓子を大量に食べているのは眼鏡に黒髪ストレートロングの見た目だけなら完全に清楚系で性格も清楚系ではある。

永道曲(ながみちきよ)。普段は自分から意見や行動に移すタイプではないものの、縁の下の力持ちタイプのしっかり者。心の内に秘めた我は強い。普段から敬語で話しているがこれは家がかなりの

趣味としてお菓子を大量に買って食べると言う趣味を持つ。


曲の隣の席に座っている少女はエリカの隣で桃味の飴を差し出してくる。所謂あ〜んというやつだ。


「・・・美味しいです、ももちゃん。ありがとうございます」

「それはなにより。買ってきてよかった」


にっこりと笑う彼女の笑顔はとても眩しく果物のように瑞々しいとエリカは思った。

桃野木桃巳(もものきももみ)。肩くらいの長さまでの果物の桃である黄金桃を思わせるくせっけのある金髪と金色の瞳を持つ彼女は曲とは正反対のゆるふわの可愛い系である。

好きな食べ物は桃。好きな色は桃色。好きな味は桃。好きな場所は桃源郷(そんな場所はない)。ありとあらゆる桃や桃色が大好きで桃と聞こえた瞬間何処にいても飛んでくるという極端な桃オタクだが、人望が厚く実家での仕事柄体力方面の事も出来るので色々な人からの信頼が本当に厚い。

実家は様々な果物を栽培しており林檎、葡萄、梨、蜜柑、キウイ、etcとある。


いや桃はないんかいというツッコミは髪の色と同じく厳禁である。


「エーちゃん。ちょっとだけゲームしよ〜。ゲ〜ム〜」

「もう・・ちょっとだけですよネムリちゃん」

「わぁ〜い。やぁ〜った〜・・・・ふわぁん」

「昨日も遅くまでゲームやってたんですか?」

「うん・・・3時までやってた」

「え?・・・それは確かに眠たいですね。ゲームやめて目的地に着くまで眠った方がいいのでは?」

「ううん。ゲームやりたい」


そう言ってエリカはゲーム機を取り出し電源を起動する。

エリカの左隣に座り、今にでも夢の世界の住人になってしまいそうな程眠たそうな顔をしている。ライトブルーをさらに白で混ぜた色の髪にカールのかかったボブショートで、常日頃から眠たげな顔をして授業の大半は起きている時もあるが、殆ど寝ている。

何か違うものを見ていると感じさせる灰色の瞳は常に眠そうにしているので、起きているのか寝ているのかの判別をつけにくい。ゲームオタクであるがいつも肝心な所で寝てしまうので半数のゲームはいい所でゲームオーバーになるそう。

付いた二つ名が【眠れるゲーム魔王】こと、飛鳥(ひどり)ネムリ。


得意な事はゲームと何処でもどんな体勢でも寝られる事。

そして最近の悩みはどんどん胸が大きくなっていく事であり、エリカを含めた5人の中では最もスタイルが良い。なので学校から、発育の暴力、ロリ巨乳などと呼ばれていて同級生や年上の女生徒からは嫉妬や羨望の視線、男子生徒からは邪な視線を浴びせられているが本人は気にしていない。


「・・・・・写真」

「そうですね。いっぱい向こうで撮りましょうね。


ただ一言なのにエリカは彼女の言っている事を瞬時に理解する。

目を閉じて背筋を伸ばしてバスの揺れにも微動だにせず綺麗な姿勢で座っている。

これは決してクールキャラを装っているとかではなく、単純に口下手に加えて喋る口数が少なく、更には人見知りが働いている為である。


森夢(もりゆめ)ルミア。きらきらと輝く翡翠色の髪を背中あたりまで伸ばし、一本で縛っている。

今は目を閉じているが、瞳の色は右目が髪色と同じ翡翠色、左目が黒曜石を思わせる純度の高い黒い瞳のオッドアイである。


慣れればそうでもないのだが、慣れるまでは知らない人だと全く話もできないらしい。

エリカ達と話す時は普通なのだがこうして周りに人がいる時ではただ一言の会話だけでエリカ以外の三人も彼女が何を言っているのか分かる。


この四人は普段エリカを妖精様などと呼んで周りを囲んでいる生徒達とは違いエリカの大切な友達だ。

彼女らはエリカが転校してくる以前から同じ学校でよく遊んでいて、所謂幼馴染という奴だ。髪の色や見た目でいじめや疎外を受けていた頃、彼女らはいつもエリカのそばに居てくれた。

まぁ曲以外の三人も髪の色がエリカと同じく目立つのでいじめを受けていたのだが。

学校を転校する事が決まった際も四人は絶対に着いて行くと聞かず強引に着いてくる程エリカを大切にしてくれているのがよく分かるし、今のバスの席も私欲のあるものからエリカを守っているのだ。


全員クラスが違うので常に一緒にいる訳ではないが、昼休みやその他の時間でよく一緒にいるのが目撃されている。

この四人の存在は紅野エリカにとっては本当に有り難い事なのだ。

いつもエリカの事を妖精様などと散々言っている他の一般生徒と接する態度があまりに違うのがエリカの笑顔を見てよく分かる。


「あ〜。やはり紅野様は美しい」

「確かに。けど妖精様と同じくらい素敵だよな、あの四人」

「俺、永道さんに一票」

「何バカなこと言ってんだ。いつも元気で可愛い桃野木さんだろ」

「お前らには目玉が付いてないのか。断然スタイルがいい飛鳥ネムリさんだろ。あの胸を触ってみたい」

「いやいやいや!人見知りで照れ顔が可愛い森夢さんに決まってんだろ!」

「「「男子最低」」」


バスの前方の席では依然としてエリカを含む五人の話で持ちきり(主に男子生徒内)で女子生徒から冷たい視線と言葉投げつけられている。

そんな女子生徒からの言葉に一部の生徒は「ありがとうございまーす!」と喜ぶ声が聞こえる。

喧騒の中でも基本的会話の内容を聞き取れるエリカは男子生徒の反応に困り果てていた。

バスの中は居心地が悪いとまではいかないが沢山の人で溢れているのでエリカはならているが、それでも少しだけ窮屈な思いはある。


エリカはネムリのゲームの相手をしながらふと違和感に気づく。


「あの・・・曲ちゃん?」

「はい?なんですか?」

「影月さんと姫咲さん、それと星川さんの姿が見当たらないんですが何か聞いてますか?」

「あぁ、それでしたらバスに乗る前に学院長があの三人は遅刻したそうなので別のバスで行くと態々報告していましたよ、他の教師の方に。私は偶然近くを通ったので聞こえてましたけど」

「・・・そう、ですか」


エリカはその話を聞いて違和感を覚える。冬華達とはバスが一緒だったので居ないことはすぐ分かったが、何故居ないのか理解できなかった。

早朝に学校へ行くので冬華に鬼電して起こして朝食をいつも通り作って一緒に学校へ登校したはずなのに遅刻しているという事実に疑問と少しばかりの憤りを感じていた。


(・・・何があったにせよ、後で冬華くんをとっちめましょう。どんな理由があったとしても罰として私にまたアップルパイを作ってもらいましょう)


「あれ?エリカちゃん、楽しそうですね?」

「・・・はい。また皆さんと一緒に遠出ができるので楽しみなんです」

「お土産も沢山買おうね」

「・・・はい」


何度か家族の付き合いで遠出はした事はあっても、多くの友人達と一緒に知らぬ地まで旅行に行く事をした事がなかったので柄にもなくエリカはわくわくしていた。

ふと、普段からやる気のないだらしのないダメ人間の彼と少しでも一緒にこの旅行を楽しみたい、そんな小さな願望までもが頭の中によぎったが、それは少し贅沢すぎるとその願いを振り払って、ネムリに付き合って一緒にゲームを始めるのだった。












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