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第8話 アクシス走る

アクシスは疲労困憊であった。最初は王城のホールの間を走るだけであった。それがホールから王城の端から端、王城から軍待機所、王都行政区、貴族区、平民区・・・アレクスはフルマラソンをこの1週間何十週もしたのである。しかも、不眠不休である。


「はあはあはあはあ・・・・もう走れない!もうゴールしてもいいよね・・・」

「エロ男爵頑張れ!その壁を越えた先には若い裸のねーちゃんがいる!がんばれ・・・がんばれ・・・。」

「エロ伯爵・・・。あとでしめるから・・・おぼえとけよおおおおおおおおおおおおおお。」


そう。アクシスが終わりのないフルマラソンをしている原因はこのすっとぼけた顔で馬に乗りながら応援しているカリカ伯爵のせいである。

時はアリアス王が目覚めた所まで戻る。


「初めてだったのに・・・・」


アレク=ド=アリアスが危篤状態から脱して生理食塩水をそれまでの渇きを癒すためごくごく飲み終わり一息ついた時のお言葉がこれである。


「アレク?そうね・・・こんな大病は初めてね・・・よくがんばったわ。」

「母上。違うのだ・・・。接吻が初めてなのだ。初めてが男とは・・・はあ。」


アレクスは飲んでいたお茶を勢いよく吹いた。宰相にむかって・・・


「あああ、宰相様。すみません。陛下。あれは接吻ではありません。あくまでも薬を飲んでいただいただけです!僕も初めてが陛下なんて嫌ですから!。」

「余では不服というのか?」

「は?」

「不服か?」

「いやいやいや。」


アレクス5歳、アリアス王の新しい扉を開いてしまったようだ。ご愁傷様。


「まあ、冗談はさておき、城や市民はどうなっておる?報告を!。」


宰相や集まっていた文官達より報告され、一瞬明るくなった空気が元通り暗いものになった。


「陛下、我が甥、アクシスにまかせれば大丈夫です!アクシスにおまかせください。」


カレカ伯爵が場を明るくしようと大きな声で言いました。大きな声で余計なことを!


「うむ。アクシスと言ったか?そなたは平民か?。」


アクシスは貧乏男爵の為、つぎはぎだらけの服を着ている。実は余所行きのもう少しましな服もあるのだが自宅から連行された為、着替えができなかったのである。


「陛下。改めてご挨拶いたします。私は、ジョナサン=フォン=エイリアス男爵の長子、アクシス=フォン=エイリアスです。父が亡くなった為に来月継続式を行う予定でした。」

「そうか。ならば、緊急事態ゆえに、この場で男爵位継続を認める。その上で余の直属で疫病対策大臣に任命する。勅命である。そなたの裁量で我が王国の人材、物資を好きにうごかしてよい。カレカ伯爵はその補佐を頼む。宰相もエイリアス卿に最大の便宜を図ってほしい。」


「へ?」


そこからアクシスの戦いは始まった。まずはホールに集められた罹患者を介抱しそれを見た王城の様々な部署から頼まれそちらにも手を伸ばした。そして、カレカ伯爵のまたしても余計な一言で軍部も治療することになった。軍には平民の兵士もいた為、涙ながらの依頼を断れず、ついに、平民区にある罹患者が収容されている教会、ギルド、商家まで手を伸ばしたのであった。アクシスの手助けをしてくれる者はいらっとする応援だけするカレカ伯爵のみだった。アレク王の勅命であるのにかかわらずである。それほど貧乏男爵エイリアス家の悪名は深かったのである。アクシスは結局、1か月間にわたったフルマラソンを完走したのであった。エロ男爵はやりきったのである。さすがに5歳の幼子に日本のブラック企業真っ青の仕事をさせていたのを見かねて一部の貴族が手を貸し、回復した軍より軍団規模の援軍がきたことにより、アリアス王国の流行り病は収束したのである。


「やった!やった!僕はやったんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」


王城の疫病対策に充てられた指令室で最後の地域の収束報告を聞いてランナーズハイのアクシスはそう王城中に聞こえる雄叫びをあげ、そのままぶっ倒れたのである。



アクシス5歳。彼はジョブチェンジしたはずだが社畜は辞めれなかったようだ。


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