第3話 エイリアス男爵家
異世界アリストラル
この世界は神アリストラルが創造したと伝えられている世界である。
人間族と少数の種族が生活を営んでいる。文化レベルは地球で言うところの中世程の文化で封建社会である。その為、人間族同士の戦いが多く、多くの国々が生まれそして滅んでいった。そして、魔法がある。所謂、剣と魔法の世界である。アリアス王国は150年前4つの国が合併し成立した国である。初代王は人の和を重視した為、和王と呼ばれそれまで敵対していた4つの国をまとめた功績によって初代王になったのであった。その人柄は温厚で臣下、民より絶大の人気があったそうだ。現在は5代目の王が即位したばかりだがその治世は安定している。
「そんな安定している国でなんでうちはこんなに貧乏なんだ・・・はあ・・・。」
「アクシス。それは教えた通り黒波が原因よ。今日、教えた通り貴族は己の責任で領地を守らないといけないわ。しかし、黒波はエイリアス男爵領で発生して男爵領を飲み込み周辺の領地まで魔獣が広がったわ。周辺の領地は大きな犠牲をだして魔獣を倒しその時の賠償を発生源である我が家に請求したの。そして発生から100年たっても賠償金を支払ってるのよ。」
黒波。100年前にエイリアス男爵領の鉱山から発生した魔獣のスタンピードである。スタンピードは時より起きてきたがアリアス王国成立以来最大のスタンピードであった。ゆえに魔獣が黒い波のようだったと言うことから当時より黒波と呼ばれていた。アリアス王国が成立時戦功により男爵位を戴いたエイリアス家は貴族として繁栄していたがこの事件によりアリアス王国で最も貧乏な貴族へとなったのであった。
「母さん。現在のエイリアス男爵領はどうなってるの?」
「分からないわ。今でも凶暴な魔獣で溢れていて誰も近づけないの。もちろん、誰も住んでいないわ。領地からの税収もないから国へ収める税は国から出てる貴族への資金で支払ってるわ。うちが貧乏の一つの原因ね・・・はあ・・・。」
アクシスは思った。うち、詰んでるやん。と。
「だからアクシス。うちは貴族なのに臣下の一人もいないの従者もよ。当時、貴族街中心にあった屋敷を売り、貴族街と平民町の境にあるここへ移ったそうよ。初代がこの小屋を建てたそうよ」
『はあ・・・』
アクシスとエリーナは同時に溜息をついた。
「貧乏は我が友!金は無いが幸せはある!」
アクシスは思わず叫んだ。
「はあああああ・・・・」
エリーナは我が子のどや顔を見て更に深い溜息がでた。
「我が家の惨状は100年前より続いているから今更でしょうけど、ジョナサンの命を奪った流行り病は深刻よね・・・。」
「父さん・・・。その流行り病が憎いです。。」
「・・・そうね・・・。けど、どうすることもできないわ。治療方法もわからず、魔法も効かず、アリアス王国中で蔓延しているみたいよ。王族貴族も罹患してる方がでているし平民は生活ができないほどの状態らしいわ。」
アクシスは日本で医療品を扱う会社にいた為医療について多少知識があった。己の腕のじゅくじゅくになった発疹跡を見て思った。これは『天然痘』だと。