醜行
『醜行』
わたしの匂いは酷いカンパネラ
彼らが言ってた田んぼのあぜ道
ゆらりくらりと脚を運ばす
わたし今生きているのね
わたしの匂いは酷いトルネリオ
彼らが笑った夢物語は
うすくとうめい羽衣を纏い
わたし今生きているのね
わたしの匂いは酷いアルテニオ
彼らが曲がったわたしのあぜ道
のらりくらりと脚は痛くて
わたし今、生きているのね
『霞む肌』
あなたの肌が霞む
それは比喩じゃない それは擬人化させてもいない
白い肌は白いまま
黒い髪は一層艶がでて
そこにいないあなたを馬鹿にしているよう
まるでそれは現象のように
まるでそれは数学の方程式のように
まるでそれは母親からのおまじないのように
そこにいないあなたを縛り付ける
一体いつからあなたの溜息を聞き流したのかわからない
美しいと自慢していた長い髪を切ったのかわからない
わからない波が押し寄せる
わかったのはあなたの肌が霞んでいたこと
そこにいないあなたに気づいた
『人間』
鋭い眼光が私を貫く
それは一つ二つと増えてゆき いつかは何百何千となるだろう
朝焼けが美しいとき 校舎の鐘が鳴るとき
夢が消え去るとき 蝉が最後の悲鳴を垂らすとき
それはわたしの内から外へと消費される
それはわたしの外から内へと浪費される
誰かが指をさす
さす さす さす
わたしの体は既に以前のものでなくなっている
しかしわたしは本当の意味で人間になった
それは人間だった