王子様の家族
今日は長めです。
ガチャガチャと食器同士が当たるような音が聞こえ、私はゆっくりと瞼を持ち上げた。
いきなり色のついた世界に眩しいと感じたが、すぐに目が慣れ始める。
真っ白な天井には大きなシャンデリア。
背中に感じるふかふかの布団。
視界を左右に動かすと、高級そうな家具があちこちに置かれている。
あ、人がいる……。
ベッドから少し離れた場所に置かれいたテーブルの所に、メイド服姿の女の人が2人。
ポットから何かの飲み物をカップに注いでいるのが分かった。
その人たちは私が目を覚ましたことに気付いていないのか、小さな声で話しながらテキパキと手を動かしている。
…どうしよう?
声をかけた方がいいかな…、いいよね?
でも……。
昔から自分から話しかけるということが、どうしても苦手だ。
話しかけようと思ってすぐに話しかけられたことなんて、今までの人生で1度も記憶にない。
話しかけようと思い、心を決めてから実際に行動に移せるまでに数分の時間がいつもかかる。
そもそも何て話しかければいいんだろう……?
というか、ここは一体どこなんだろう?
この国の王子様と一緒にいて、家に連れて行くと言われ……。
そこからどうしたんだっけ……?
この部屋の内装から普通の場所でないことは想像がつく。
しかもメイドさんらしき人たちもいるし……。
メイドさんたちの名前なんて当たり前だけど知らないし……。
それ以前に私の声が届かない可能性だって十分にある。
もしも声をかけて、何の応答も無かったらそれこれ心が折れてします……。
「…あ」
そんなことを永遠に考えていれば、こちらを向いた1人のメイドさんとバッチリ目が合ってしまった。
静かな時間が数秒流れ、その後……。
「すぐにレオ様に連絡を!!ソラ様が目を覚まされたと」
「は、はい!」
私と目があったメイドさんの声に返事をして、慌てて部屋を出て行くもう1人のメイドさん。
その背中を見送ったメイドさんが私の方を振り返り、表情を緩めた。
「お目覚めになられて良かったです。3日も目をお覚ましにならないので、皆さん心配されておりましたよ」
え?3日?
私そんなに眠っていたの…?
「こちらマリンを使った紅茶です」
テーブルからカップを1つ手にし近づいてきたメイドさんは、ベッド脇に置かれていたサイドテーブルにカップを置いて、私の体に手を回し、起き上がられてくれた。
体がガチガチに固まっていて、手を貸して貰っても起き上がるのがやっとだった。
「どうぞ」
「…あ、ありがとうございます……」
メイドさんから渡されたカップを手に持つと、鼻腔をくすぐる、心が落ち着くような良い香りがした。
……この匂い。
確か女神さまと初めて会った時に出して貰った紅茶の匂いだ……。
…メイドさんがマリンって言っていたような……。
初めて聞く名前だな……。
ゆっくりとカップに口をつけて、紅茶を喉に流し込む。
…やっぱり、あの時の紅茶だ……。
本当に美味しい……。
もう一口飲もうと紅茶を口元まで運んだ瞬間……
バタバタバタと走ってくる足音が近づいてきたと思えば、バッとドアが勢いよく開き、王子様が現れた。
「ソラ!!」
私と目が合うなり名前を呼びながら、ベッドの近くに駆け寄ってくる。
そして、私の顔を覗き込んで、安堵の表情を見せた。
「…良かった。いきなり倒れたかと思ったら、高熱を出して3日も目を覚まさないから。だけど医者は大丈夫だって言うし……。ホントに心配した」
そっか……。
体がだるいのは3日も寝てたせいもあるのかもしれないけど、熱が出てたからなんだ……。
そういわれると、まだ頭も痛いし、熱っぽい気もする。
「…ご心配おかけしました。王子様のお手を煩わせるようなことを……申し訳ございません…」
精一杯の丁寧な言葉遣いを心掛け、頭を下げた。
王族に対しての言葉遣いだなんて…どんな言葉が正解だなんて分からないから。
今までの知識を呼び起こして言ってみたけど、あやふやな部分もあるし、間違ってるかも……。
不安になりながら頭を上げれば、王子さまは優しい表情を浮かべて首を横に振った。
「気にしないでいいんだ。まだ本調子ではないだろうから、ゆっくり休んで」
そう言って私の頭を優しく撫で、王子様は部屋から出て行った―――。
それから更に3日。
毎日部屋に現れるお医者さんが「もう動いても大丈夫です」と許しがでた。
それまでは絶対安静と言われており、1日の半分以上をベッドの上で過ごす生活を送っていた。
その間私の面倒を見てくれていたのは、目が覚めた時に紅茶を持ってきてくれたメイドさん。
名前はジェシカさんと言って、お城の中のメイドの中では結構上の立ち位置にいるらしい。
…らしいって言うのは、たまにお手伝いに来てくれるメイドさんたちが話しているのを聞いたから。
見た目はまだ若そうなのに、仕事ができて、上の方の偉い立場なんてすごいな。
しかも、シルバーの髪にグリーンの瞳に整った容姿。
メイド服の上からでも分かるスタイルの良さ…。
ほとんどの時間をベッドにいる私に、暇つぶしになればと本を持ってきてくれたり、ご飯を運んでくれたり、美味しい紅茶をいれてくれたり。
こんなに綺麗で優秀な人が私みたいな人のお世話をしてくれているなんて……。
どうしようもなく申し訳ない気持ちになってくる……。
「病み上がりの所申し訳ありませんが、王がソラ様に会いたがっております。その為、明日会っていただくことになりました」
お医者さんからのお許しがでたその日の夜。
部屋に顔を出したジェシカさんがとんでもないことを言い出した。
いつもは夕飯を片づけ終わり、それからは部屋に来ることが無かったジェシカさんが、その後に部屋に来た時点で何となく嫌な予感はしていた。
だけど、全く予想も出来ないようなことを言われ、読んでいた本が手から滑り落ちた。
「……え?」
いきなりの言葉に目を点にして、ジェシカさんの顔を見上げる。
私の顔を見たジェシカさんは、苦笑いを浮かべたがそれ以上は何も言わなかった。
いや、言えなかったというほうが正しい気がする。
王様、つまりこの国で一番偉い人の言葉なんだから、メイドさんが何かを言うことはできないだろうし。
ましてや、助けて貰って行く宛てのない私が王様に逆らうようなことは絶対にできないわけで。
この話が来た時点で私に拒否権なんてものは存在しないんだ……。
でも…明日って……。
さすがに急すぎるような……。
王様がどんな人かなんて分からないけど、心の準備をする時間くらいは欲しかったです……。
その夜、数時間後に迫った王様との謁見が不安過ぎて、なかなか眠りにつくことが出来なかった。
「ソラ様とてもお似合いです!」
私の姿を見て、メイドさんたちから声が上がる。
……そう言ってもらえるのは嬉しいけど……。
今日の朝。
目が覚めるのが分かっていたようにドアをノックする音が聞こえ、私が「どうぞ」と言い終えるや否や、数人のメイドさんが部屋に入ってきた。
驚いて言葉も出ない私をよそに、お風呂に入れられ、淡いピンク色のドレスを着せられ、髪を綺麗に整えられ、メイクをされ、アクセサリーをつけられ……。
気付けば、鏡の前には綺麗に着飾った私が立っていた。
「本当にお綺麗です」
ジェシカさんを始め他のメイドさんたちにも口々に褒められるが、それに引きつった笑いで返すのが精いっぱいだった。
…こんなに綺麗で高そうなドレスやアクセサリーを身に着けたことが無い。
なんだったら、誰かにメイクをされたことも、髪を整えられたことも経験がない。
前世では必要最低限のメイクに、髪はいつも後ろでひとつにまとめてばかりだったし。
ほとんど休みなんて無かったし、もし休みがあったとしても一日中家に引きこもり死んだように眠っていたから、服はスーツかパジャマの2択。
だからアクセサリーを身に着ける余裕なんて無かったし、持っていたかも覚えていない程だ。
そんな私がこんなドレスを着ても、メイクをしても、髪も綺麗にしても……。
どんなに着飾ったとしても、似合うわけがない。
この世界に転生してきてから初めて自分の姿を確認したけど、少し肌が綺麗になった程度で背格好も容姿もほとんど変わっていない。
肌が綺麗になったと言っても、転生前はストレスや睡眠不足で荒れに荒れていたから、マイナスがゼロになったくらい。
頑張って着飾っても、今の私はそれに見合っていないのを自分で痛いほど感じた。
「では、参りましょうか」
ジェシカさんと部屋の外へ出れば、装備を付けた兵士らしき男の人が立っていて、私たちが歩き始めるとその後ろを静かについてきていた。
多分、護衛の人で、王様か誰かに頼まれたんだろうな……。
お城の中なのに護衛って……。
そんなに危ないところなのかと少しの不安感を覚えた。
それにしても……。
私は歩きながらキョロキョロと視線を動かしていた。
無礼だとは思いながらも、初めて見る部屋の外に興味がありまくりだった。
長い廊下には赤い絨毯が敷かれていて、右に曲がったり左に曲がったり。
所々には大きくて立派なドアがついていたり、綺麗な花が植えられている花瓶が置いてあったり、絵画が飾ってあったり。
天井には等間隔にシャンデリアが吊り下げられていたり……。
見渡す限りのものが高級そうで、しかもお城自体も広そうで、場違い感を感じてしまう。
「この扉の奥で王様がお待ちです」
……え?もう?
目の前には、廊下の突き当りにある一際大きくて立派な扉。
お城の中を見渡しているうちに目的の場所に到着していたらしく、一気に心臓がバクバクし出す。
待って……。
まだ全然心の準備が……っ。
昨日寝る前にも覚悟を決めようと思っていたし、今日起きてからも思っていたけど、結局無理だった。
ジェシカさんが頭を下げ、私の一歩後ろに引くと、扉がゆっくりと開き始める。
もう、逃げられない……。
いやそもそも元から逃げられなかったけど……。
扉が開くと、その奥には驚くほど広い部屋が続いていた。
私がいた部屋も広かったけど、その何倍もあるような部屋。
床には、一直線に廊下と同じような赤い絨毯が敷かれている。
その絨毯が途切れた先には、床が数段上がった場所に豪華な椅子が3脚置かれていて、それぞれに人が座っていた。
真ん中に座っている男の人と、その両脇にいる綺麗な女の人2人。
多分真ん中に座っているのが王様だとは思うけど……。
女の人たちは誰なんだろう……?
そのうちの1人は、淡いピンクの髪に、シルバーの瞳をしていて、頭の中にハテナが浮かんだ。
王様ともう1人の女の人、それに王子様は金髪にブルーの瞳なのに……。
と一瞬考えたけど、この場面で王様の横に座っているということは、おそらく王様の家族なんだと思う。
王様に会うとは聞いていたけど……家族にも会うなんて……。
部屋の中にいた護衛の人に導かれるようにして、王様たちの前に立った。
「いきなりこのような場に呼び出してしまいすまない。体調を崩していたと聞いたが、もう大丈夫なのか?」
何を言われるのかとビクビクしていた私に聞こえてきた声は、予想していたよりも遥かに優しいだった。
「……あ、は、はい」
震える声を抑えるようにして頷く。
「そんなに緊張しなくとも、大丈夫だ。…あぁ、本題に入る前に私たちの自己紹介をしないとな。私はこのクラーク王国の王をしている、アルフォン・クラーク。私の右側にいるのが妻のエリーナ。そして、娘でレオの姉であるオリビアだ」
私から見て左側にいる人が優しく微笑み、左側の人は楽しそうに手を振っている。
左側の人、淡いピンクの髪に、シルバーの瞳の人が王妃様で右側が王女様……。
3人とも怖そうな印象はないが、王族と言うだけで何とも言えないオーラを感じる。
王族に囲まれているのも緊張するが、王様の放った言葉でやっとここがどこなのか分かった。
……クラーク王国。
全く聞いたこともない国……。
本当にここは異世界なんだと実感させられる。
「それでこの場に呼んだことについてなのだが…」
そんなことを考えていれば、王様の声が聞こえ思わず身構えた。
もしかしたら、「この国から出て行け」とか言われるかもしれない。
もしもそんなようなことを言われたら、どうしよう。
でも王様に逆らうことなんて出来ないから…もしそう言われたら、すぐに出て行こう。
そう心の中で決心をして、王様の方を見た。
「レオに婚約者になってくれと言われたそうだな」
……え?
まさかの言葉に聞き間違えかと王様の顔を見たが、真剣な瞳と目が合い、慌てて頷いた。
「は、はい……っ」
「そうか…。それで……」
「親父!!」
王様がさらに言葉を続けようとすれば、それを遮るように部屋の奥から王子様が飛び出してきた。
あの奥はどこかに繋がってるのかな…?
王子様が現れた驚きに固まっていれば、ドンッと体に小さな衝撃を感じ、視線を下に向けた。
そこには……。
「お姉ちゃん!!」
クリクリとした大きな瞳をした小さな男の子が、私の足元に抱き着いていた。
お、お姉ちゃん……?
見覚えのない小さな男の子にお姉ちゃんなんて言われ、動くことが出来なくなった。
「あらあら、ビリー。ソラちゃんを困らせてはいけません」
椅子から立ち上がった王妃様が、男の子に優しく声をかけながら抱き上げた。
そのせいで王妃様との距離が一気に近くなる。
……美しい人。
「ソラちゃんごめんなさいね。この子はビリー。レオとオリビアの弟で、一番末っ子なの。人懐っこくてソラちゃんに迷惑をかけてはいけないから、今日はお部屋で待っているように言っていたのだけれど……」
王妃様が斜め後ろに視線を向けながら言うので、私も同じ方に目をやれば、奥の方でメイドさんが深々と頭を下げているのが見えた。
きっとあのメイドさんが面倒を見ていたんだろうな……。
「ソラお姉ちゃん!!」
王妃様の腕の中にいたビリー様が、私に向かって手を伸ばしてくる。
それにつられるように手を差し出せば、いつの間にかビリー様が私の腕の中にいた。
「あはは!!」
嬉しそうな笑みを浮かべ、ギュッと私に抱き着いてくる。
……ズシとくるけど、苦痛のある重みじゃない。
何歳なのかは分からないけど、子供ってこんな感じなんだ。
私には兄弟、姉妹がいなかったし、友達もいなかったせいで、小さな子供に触れる機会は全く無かった。
今まで子供を抱っこしたことのない私にとっては、何よりも新鮮な重みだった。
「こらビリー!ソラちゃんは体調を崩していたのだから、あまり迷惑をかけてはダメよ」
王妃様がそう言うと、ギュッと抱き着かれていた体が離れ、私の事を可愛らしい顔が覗き込んでくる。
「ソラお姉ちゃん、痛い痛いなの?」
子供らしい言葉を使われ、思わず口元が緩みそうになる。
「もう大丈夫ですよ」
いくら子供で可愛かろうが、王族の人間に変わりはなので丁寧な言葉で答える。
そう言えば嬉しそうに笑って、私の腕から抜け出すと今度は私の手をギュッと握ってきた。
温かくて小さな手。
心がじんわりと熱くなるのを感じた。
「俺の許可なくソラに会うなって言っただろ!」
その声にハッとして、王子様と王様の方に顔を向ける。
そこには怒りの表情を浮かべている王子様と、それとは対照的に穏やかな顔をしている王様。
「許可も何も、ソラちゃんはお前のものではないだろ」
「だけどソラは俺の婚約者だ!それに体調がやっと戻ってきたソラにムリさせるなよな」
「婚約者だと言っているが、ソラちゃんはお前の婚約者になることをいいと言ったのか?」
王様のその言葉に2人がこちらに顔を向ける。
あ…いきなり会話の矛先が私に……。
「そ、それは……」
さっきまでの威勢のよさはどこに言ったのか、王子様の言葉の勢いがきなり落ちた。
もしかしなくとも、今までの自分の行動を思い返して、返事を聞いていないことに気付いてしまったのかもしれない。
確かに王子様の勢いには驚いたけど、しっかりと自分の意見を言うことが出来なかった私にも非はあると思う。
「もしかして、勝手に婚約者になってくれって頼んで、返事を聞いてないの!?強引な男は嫌われるよ」
今まで黙っていた王女様が口を開きながら、私の元まで歩いてきて、ビリー様が繋いでいる手とは反対の手を掴んだ。
「でも、こんなに可愛い子が来てくれたら私は嬉しいけど!」
目が合えばニコッと笑われ、その可愛さに思わず心臓がドキッと音を鳴らした。
「それで、ソラちゃんの気持ちはどうなの?」
王妃様が私の手を掴んでいた王女様の手を離し、私の前に立って首を傾げてくる。
……私の気持ち。
「本当の事を言っていいのよ。どんな返事が来ても、誰もソラちゃんのことを責めたりなんてしないから」
王妃様の優しさが嬉しくて鼻の奥がツンとした。
チラッと王子様の方へ視線を向ければ、不安そうな表情をしている。
…正直怖い。
王妃様は責めないと言ってくれたけど、もしかしたら誰かの機嫌を損ねてしまうかもしれない。
でも、今ここで私が自分の気持ちを言わないと、何も進まない……。
スーッと小さく深呼吸をして、私は誰の表情を目に入れないように俯いて、口を開いた。
「…素直に言いますと……戸惑っています……」
「つまり、婚約者になること自体は嫌ではないと?」
「……ですが私は王子様の婚約者には相応しくないと思います」
王様からの質問に顔を上げ小さく頷いた後に、言葉を続けた。
王族になる人間に相応しいのは、もっと堂々とした人間だと思う。
それに比べ私は、自分の意見もまともに言えないような、常に誰かの下にいるような人間。
王子様の婚約者なんか相応しいわけがない。
「だが、レオはソラちゃんのことが好いているようだ」
へ……?
まさかと思いながらも王子様を見れば、私と目が合った瞬間に逸らされてしまった。
でも、そう言えば……。
通行許可証がなく入れないと分かり去ろうとした時、「一目惚れした」と言われた気がする…。
「そ、そんなこと……。私は王子様に気に入っていただけるような人間では……っ」
「何を言っている!」
いきなり部屋中に響いた大きな声に、ビクッと肩が跳ね上がった。
どうやら声の主は王子様だったらしく、ドンドンと足音を鳴らしながら近づいてくる。
……え?
なに……?
もしかして何か怒らせるようなことをしちゃったのかも……っ。
恐怖で俯いて目をつぶれば、両肩に優しく何かが触れる感触がして、目を開いた。
肩に乗っていたのは王子様の手で、目の前には真剣な瞳をした王子様がいた。
「そんな自分を卑下するようなことを言うな。俺が惚れた君はとても魅力的な人だよ」
恥ずかしいセリフを至って普通に言った王子様に対して、私が恥ずかしくて顔が熱くなるのが分かった。
漫画でしか見たことが無いような言葉。
それを言っても絵になるのは彼が王子様で、容姿が整っているからなんだろうな……。
「……ふ」
王子様の言葉に対して何も返せないでいれば、誰かが噴き出す声が聞こえた。
「あはは!お母様聞いた!俺が惚れた君はとても魅力的な人だよですって!氷の王子様と呼ばれているレオからそんな言葉が聞けるなんて!」
弾かれたように笑いだした王女様につられて、王様と王妃様も笑い始める。
え……そんなに面白かったのかな?
しかも氷の王子様ってなんのこと?
話の流れ的には、王子様の事だと思うけど……。
「ではこうしたらどう?ソラちゃんを数か月…そうね、3カ月このお城で一緒に過ごしてみて、それでレオの婚約者になってもいいか決めてもらいましょうよ。その間にレオはソラちゃんのことを口説き落としてみせばいいじゃない」
一番早く笑いが治まった王妃様がそんなことを言い出した。
「そ、そんな……。お城の中で過ごすだなんて…ご迷惑では…?」
実際もう1週間はお世話になっているし。
これ以上ここにいるのは気が引けてしまう……。
「いや、そうしよう」
「そうね、面白そうだし!それにソラちゃんと過ごせるなんて楽しそうだわ!」
「そうだな。それにここにいるのを迷惑がる必要なんてない。なんだったら、我々の事を本当の家族だと思って、もっと楽に接してももらって構わない」
王子様と王女様が口々に賛同し、ついには王様まで頷いてしまった。
え?
もう決定事項なの?
というか、本当の家族みたいにって……。
出来るわけがないじゃないですか……。
「ソラ」
頭上から声をかけられ上を向くと、グッと王子様が顔を近づけてきたことにより、一気に距離が縮まる。
「絶対に落として見せるから覚悟しておけよ」
至近距離でニヤッと笑った王子様は、距離を離し私の頭の上にポンと手を置いた。




