側近視点
「ソラっ!!」
そんな焦ったように大きな声を出すレオ様を見たのは初めてだった。
「レドガー、馬車だ!」
地面に倒れ込んで意識を失った彼女に自分の上着を被せ、抱きかかえたレオ様は俺を見て声を上げた。
「あ、はいっ!」
馬車の御者に急いでお城まで行ってくれとお願いし、レオ様と共に馬車に乗り込んだ。
お城までの道中、俺は彼に何の言葉もかけることが出来なかった。
なぜなら、長い付き合いの中でも彼のこんな姿を見たことが無かったから……。
門の入り口につき、王都に入ろうとした瞬間。
「馬車を止めろ」というレオ様の一声により止まった馬車から、どうしたのかと声をかける隙も無く、彼は馬車から飛び降りてどこかへ走っていった。
どこかと言ってもこの辺は建物も大きな木もなく見晴らしのいい場所。
レオ様がどこに行ったのかなんて遠くからでも分かった。
分かったけど……驚いた。
レオ様が一目散に向かっていった先が、女性のところだったからだ。
何を話しているのかまでは距離がありすぎて分からなかったが、レオ様はその女性の手を引いて戻ってきた。
女性は困っているような素振りをしながらも、レオ様に引かれるまま俺たち護衛がいる門の所までついてきた。
その一部始終を見て、俺たち護衛は声すら出なかった。
と言うのも、明らかにレオ様が女性の事を引っ張ってきたと言っても過言ではないからだ。
そんな場面に今まで一度も遭遇したことが無い。
そもそも、レオ様から女性に声をかけるという行為自体初めて目にした。
レオ・クラーク。
クラーク王国の王子。
そんな彼は『氷の王子様』と呼ばれている。
読んで字のごとく、氷のように冷たいからだ。
男性にも冷たいが、女性に対しては特に。
パーティーなどで名のあるご令嬢に言い寄られているところを見ることは多いが、全てスルー。
まるでその場にいないように、言葉が聞こえていないように完全に無視。
ご令嬢方が可哀そうになるほど冷たい態度をとっているところしか見たことが無い。
だからこそ、自分から声をかけ、手を取り、お城に連れて行くなんて……。
しかも、通行許可証も持っていないどこの人かも分からない女性を……。
でも俺はどこかで期待している。
青白い顔をしている彼女を大事そうに、それでいて心配そうに見つめている王子様が変わることを。
いや、確実に変わり始めている彼がさらに変わることを……。
……違う。
俺はもうすでに気付いている。
『氷の王子様』と呼ばれ恐れられている彼が、たった1人の女性を前に普通の恋する男になっていることを……。
サブタイトルは後々変える可能性があります。




