2-3. 画面の中
私は行き止まりから引き返した。そして少し戻り、また画面を、その前に座る人の背後から眺める。両手を下ろして、右手は肩から提げた鞄の留め具をいじったりしながら。全く所在なく、例えば他の人がそうしているのを後で見ることになるように、腕を組んだりするなんて、思いつきもしなかった。そのときには座っている人ばかりで、そんな姿勢の見本もいなかったのだし。
見覚えのある光景が、眼鏡をかけた背の高い男の人の肩越しの画面に映し出されていた。平面の世界の中で、向かい合った二人が戦っている。もっとも、私は何を知っていたわけでもない。レバーやボタンでキャラクターを動かし、画面の上の方に出るメーターで表される相手の体力というか生命力というか得点というか、とにかくそういうものをなくしてしまえば勝ちだというぐらいのことだけを、私は知っていた。他は何も分からない。あの恐ろしげな形相で変な髪型の黒い胴着姿の男――それが勝ち進んでいる――の名前だとか、相手が攻撃してそれを受けたように見えるのにまるで意に介さず、むしろよっぽど強烈に反撃ができる理由だとか。そして、見ている間に理解したこともある。画面の下の方のメーターが、仕組みは分からないけれどだんだんとたまっていき、最大に達すると大技の出番なのだというのは、一つか二つの試合で分かった。私は一目でそれが好きになった。つまり、大技であることを強調するように閃光とともに一度画面の中の動きが止まり、そして胴着の男は、大げさに構えを決めて、その両手から何か光の弾を放つ。すると相手は吹き飛ばされ、見る間に体力はごっそりと奪ってしまう。その技で試合を決めると、さらにもう一つ、画面の中に派手な輝きが繰り広げられる。
意味もルールも分からないのに、そんな光景を見て、私の胸はどうしようもないほど高鳴った。あの瞬間、さっきまではじりじりと、小波が寄せたり返したりしていたくらいだったのが、突然全部を呑み込む大波が来たような、そんな瞬間が来るのを、私は待ち望むようになっていた。それまでは劣勢だったとしても、ため込んだ力が解放されると、あっという間に全てがひっくり返ってしまう。メーターがたまるのが分かると、私はその瞬間を待ち構え、何も見逃したりしないようにということしか考えられなくなる。
そしてあるとき、せっかくメーターがたまったのに、じらすようにして大技が使われなかった。見ている間に、私はこういうところでこの大技は使われるんだということを知っていた。例えば回し蹴りの後に拳が突き上げられた後、流れるように。レバーを四分の一周回し、ボタンが押されて。しかしこのときには、メーターは必要な分がたまっているのに、なぜかそれが繰り出されなかった。じれったく思っていると、突然、聞いたことのない音とともに、見たことのない大技が繰り出された。私はあっけにとられ、何が起こったのか分からなかった。不思議だったのは、レバーを動かす音なしで、それが起きたことだった。いつも、何か特別な技の時には、レバーが回されていたのだから。四分の一回転、半回転、四分の一回転を二回続けて、といったように。しかしその大技では、レバーを握る――その人は握る形で持っていた――手はわずかに動くだけで、もっぱら聞こえるのはボタンの音なのだった。もう一度それを見たとき、披露されたとき、私は画面の中で何が起こっていたのかを理解した。といっても、それは画面が真っ白になったまま、何か相手を叩きのめしているような様子が見えるだけだった。そんな一瞬が終わると、もう試合は終わっている。まだまだ相手には余裕があったはずなのに。