04
目の前は閃光に包まれ真っ白になった。あまりの衝撃に家具が、家屋が揺れる。
雷鳴が着地点に選んだ先は、割れそうになっていた卵だった。
稲妻が卵を劈いたのだ。
「!?」
伏せた瞳の隙間からその光景を捉えた彼は絶句するしかなかった。
咄嗟に構えた防御壁で自身は無傷であったがそれを確認することも疎かになるほどに、打たれた卵の行先を見ていた。
卵は雷を受けて──
縦真っ二つに割れていた。
微塵になることも、燃え尽きることもなく弧としての形状は保ったままだ。
オルツは警戒を強め、張っていた防御壁をもう一枚重ねながらそれを見やる。
孵化時のジグザグな線と、雷に打たれてできたまっすぐの線両方が刻まれていた。中は……あれだけの雷を直に食らったのだ。生きてはいないだろう、或いは瀕死か。
臨戦態勢で観察していると殻の中で何かが蠢いた。それに合わせ(付け焼き刃ではあるが)間合いを図る。
『……キシェエアアアッ』
それはキョロキョロと周囲を一瞥した後、甲斐甲斐しく産声を上げた。鳥とも獣とも判別はつかない。勇ましくも、しかし赤子らしいか弱さがあった。
死んでも、瀕死でもない。どうやら予想を裏切り謎の生物は無事この世に生を受けたようだ。オルツの気が気でない表情を見るに、おめでとうこざいます、元気な赤ちゃんですよと祝福をする雰囲気でもないが。
それの背中には翼が生えていた。バタバタと振るわせるとまとわりついていた殻が散り、ゴツゴツとした鱗や鋭い爪が露わになる。
頭に乗っていた殻が落ちると、深緑の瞳が覗く。思わず息を呑んだ。
「クワイェルさん、大丈夫ですか!今凄い音がしましたけど」