ゾンビ・ブライド 2013年日本
ゾンビ・ブライド 2013年日本
職場の上司と不倫関係にあるアイリ。不倫相手の吉岡に痴情のもつれで殺されてしまう。翌朝目が覚めると、アイリはゾンビになっていた。茫然自失となったアイリは吉岡の家へ向かうが、そこにはゾンビとなっている吉岡の妻の姿が。吉岡とは会えず、どうして良いか分からないまま街をさまようアイリに声をかけたのは、死体解体中の先輩ゾンビ、ヨウコだった。
こういう映画にありがちなエログロとりあえず裸にしときゃいいだろ的な低予算映画かと思えば、以外や以外、きちんとしたドラマのなかなかの良作。全編 70 分という長さもサラッと観るには丁度いい。
本作のゾンビは日陰者だ。普通に存在するのだが一般には知られておらず、皆コソコソと隠れるように生活している。その設定が不倫しているアイリと重なっている。
このゾンビ、放っておくと脳が腐って理性を無くすらしく、それを防ぐ唯一の手段が人間の肉を食べること。アイリを助けたヨウコは、ゾンビ相手に人間の肉を使った料理を出すスナックを経営している。アイリと出会った時は、店で出す食材を調達中だったのだ。死体片手にアイリと話すシーンは、ヨウコの気風の良いキャラクターと死体のコントラストで、絵面がすごいことになっている。
タイトルがブライドとなっているが、作中で結婚や婚活が中心になることはない。しかし、このブライドというのが重要なキーワードになっている。ヨウコとの出会いを通して前向きになったアイリが立てた目標が結婚、「ゾンビ・ブライド」だ。そんなアイリに触発されて、ヨウコも自転車の練習を始める。二人の友情は見ていて気持ちがいい。
前向きに歩き出したアイリと逃げ続けた吉岡の、二人がたどり着いた結末が対象的なのには笑ってしまった。ダメな男ばかりが出てくるが、スナックの常連、人肉卸売業のマエカワが最後に漢気を見せてくれる。
「死んでからでも夢は叶う」
高らかにゾンビ讃歌を歌う本作。ペイ・フォワード的なラストシーンで爽やかに鑑賞できる。