閑話:カンナの思い出(召喚前)
今回は、カンナの思い出話の回です。
私には、何かが足りなかった・・・
私は、父親の都合で中学三年生の冬に、彼のアパートの隣に住む前まで住んでいたアパートに引っ越した。
そして、その地域の中学校に無心で向かう。そして、担任の先生に呼ばれて教室に入り・・・
・・・そして、彼と出会った。
全てにおいて理想の姿に、私は心を奪われた。でも当時は初恋だと気付かなかった。そして席も隣で、先生に案内役を任せられていた。彼···白霧達斗さんは私を席に案内して話しかけてきた。
「初めまして、俺は白霧達斗です。気軽に白霧と呼んでください。」
「はい、では白霧君と。私は、神倉柑奈です。よろしくおねがいします。」
「よろしく、神倉さん。」
そう言って、前を向く。かっこいい・・・
「どうしました?何か俺の顔に何かついてますか?」
「・・・い、いえ!何でもないです・・・」
「う、うん・・・分かった。」
私ってばいつの間にか見惚れちゃってたみたい。それからずっと、授業中も横顔を見入っていた。そして、午前中の授業を聞き流して終わり昼食の時間になった。
「神倉さん、食堂に行きましょう。それとも俺の作った弁当を別の場所で食べますか?」
「え?・・・お弁当を作るんですか?」
「そうだね。・・・」
「達斗の作った料理ってお世辞抜きにめちゃくちゃうまいんですよ。神倉さん。あぁ、すいません。俺は稲野優羽です。よろしくおねがいします。」
「よろしくおねがいします、稲野君。それで、白霧君。料理が美味しいって本当ですか?」
「あぁ、俺の作った弁当を食べた人はみんな美味しいって言うけど・・・」
「ぜひ、食べさせてください。」
「分かった。いつも、二人分の弁当を作っといて良かった・・・」
私は、白霧君のお弁当を食べさせてもらう事になった。
「どう?美味しくなかった?」
「いえ、とても美味しいです。・・・あの、これからもお弁当を食べさせてください。」
「え?・・・いいですよ。でも、高校はどこ行きたいとかありますか?」
「白霧君と一緒のところがいいです。」
「分かりました、教えますよ。」
そして、私と白霧君の進学先が決まり、お弁当をもっと食べれるようになった。
そして、高校一年生の7月の文化祭準備期間に実行委員として私と白霧君が選ばれたから、二人っきりで作業をする日がしばしばあった。その度に(少なくとも)私は白霧君を異性として意識してしまう。
そして文化祭三日前に白霧君を文化祭に誘ってみた。
「ねぇ、白霧君。三日後の文化祭、一緒に回らない?」
「・・・いいよ。」
あっさりokが出た。
そして当日。私服で学校に行って、探すとあっさり白霧君を見つけた。
「おはよう、神倉さん。」
「おはよ、白霧君。・・・この服、どうかな?」
「個人的には、とても似合ってると思う。」
「よかった、ありがとう。」
その後いろいろと見て回り、時間が終わったから一緒に帰る。手を繋いで一緒にアパートへ戻り、別れる。いつもこの瞬間は寂しかった。でも幸せだった。
そして時は流れて1月中旬のある日。白霧君が大怪我を負ったと知らされ、私は居ても立っても居られなくなった。
そしてクラスの女子が「白霧君の病室に行こうかな。」と言ったとき、私は嫌と、ダメと思った。その嫉妬の心でこの感情に気付いた。
その不思議な、離れると心が締め付けられたり、その人と一緒にいたいと思ったり、独り占めしたいと思うこの感情―恋心を抱いていたことに気付き、そして今、会うのが恥ずかしくなった。
「・・・今でもいい思い出だよ。初めてタツトと出会った時の思い出。」
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