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回復術師の戦闘員  作者: 烏天狗
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50話 来客

拳を軽く握りコンコンコンと三回ノック。カチャッと音がして解錠。ガクの胸辺りの背丈の少女が現れた。


「なんですか?」


「お前、今、暇か?」


質問の意図が分からずポカンとした顔でガクを見る。


「暇って言えば暇ですけど……なんかレナに用事でもありましたか?」


「え、ああ、まあ……。取り敢えず俺の部屋来てくれ来たら分かるから」


ネタバレしないよう作り笑いでごまかすとガクは強引に部屋へ呼ぶ誘いへと繋げる。

レナはガクの真意を疑うようにグッと顔を近づけガクの顔を覗き込むと、


「分かりました、いいですよ!」


突然笑顔になり快く応答。不自然ではあるが呼び出せただけガクにとっては及第点だ。


そのまま二人でガクの部屋へと足を運んだ。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



部屋につき自分の部屋ではあるが一応ノックする。おう、といつもよりは控えめなダイヤの返事が聞こえた。


「え、なんであの人がここにいるんですか?この部屋ガックンの部屋ですよね?」


「まあ色々あって、じゃああとよろしく」


ガクは、ドアを開けるとトンとレナの背中を押した。


「えっ?ど、どうゆうことですか?」


「用があるのは俺じゃなくてダイヤの方だから」


理解に苦しむレナを部屋に押し込み扉を閉める。こんなやり方よりもっと良いやり方があると分かってはいるが不器用なガクにはこのくらいしか出来ない。後のことは完全にダイヤ次第だ。


ガクは扉の脇に寄りかかり聞き耳を立てた。


「急に呼び出してごめん……」


「早くしてください。レナも暇じゃないんですけど」


──いや、さっき暇って言ってただろ!


中から聞こえるおかしな返答にガクは心の中で突っ込む。すると、話は予想だにしない展開へと発展していった。


「俺の話になるんだけど、使える魔法とか調べられたりする?」


──あいつ何言ってんだ?


予定していたものとは異なる内容に戸惑うガク。繋ぎの話題にしても少し重すぎる。


「シャーロットさんほどバリエーションは有りませんが……何でそんなことでわざわざ呼び出したんですか?」


「ガクには知られたくなかったから。俺も今回みたいな戦いが起きたとき少しでも戦力になりたいし。ま、シンプルに魔法が使いたいってのも有るんだけどね」


ダイヤは、はは、と軽く笑う。彼も彼なりの後ろめたさを感じながらここにいたのだ。


ガクは寄り掛かっていた体を起こし、静かにその場から立ち去った。


「ガックンにバレたくなかったならなんで直接言いに来なかったんです?」


「それは……直接は緊張するじゃん?レナちゃんガクと仲良さそうだったし」


「……?よく分かりませんが、まあ、調べればいいんですね?」


「そ、よろしくー!」


ダイヤの軽いノリは嫌いなようで、あからさまに嫌な顔をするレナ。渋々ダイヤの額へ手を伸ばした。


「うーん、風属性ですかね……土属性から派生したものです」


「風かぁ、なんかパッとしなくね?」


「そうですか?サンドラさんは使いこなしてましたよ。攻撃にも防御にも偵察にも」


ダイヤは自分の掌と手の甲を見比べ、凝視する。


「使い方次第ってことかぁ、ありがと」


「いえ、じゃあレナはこれで」


軽く頭を下げ部屋を出ていった。再び独りになったダイヤ。


「で、魔法ってどう使うんだ?」


属性が分かっただけでダイヤは使い方だけでなく鍛え方すら分からないことに今更気が付いた。しかし、その頃には既に一人になっていた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



城内は騒然としていた。兵士はあたふたと広い廊下を駆け回り、見るからに普通ではないことがガクにも分かる。


「どうしたんだ?また敵襲でもあったのか?」


横を通りかかった兵士を呼び止める。


「1年ぶりにゲド様がご来城してましてザック様に会わせろと」


──ゲド様?また聞かない名前だな


「しかしザック様が不在で……すみません」


奥から走ってきた他の兵士に呼ばれ、ガクに一礼すると小走りでそちらへ向かった。取り敢えず敵ではないのだろうと言うことは分かるがそれ以上はさっぱり情報がない。


ガクも兵士の流れに身を委ねるように下階へ向かう。


「お前か?奇妙な回復力を持つ男ってのは。強力なマナを感じるなぁ」


「えっ……」


曲がり角から3メートルはあろうかと思われる大男が現れガクの顔を怪訝な目付きでジロジロと見る。


頭部からは2本の角のようなものが生え、口からは鋭い歯が覗く。真っ黒いコートを着ているため全身は見えないが右手には明らか凶器と思われる長い棒。

あまりの圧力にガクは言葉を失いその場に硬直。


「ゲド様、ザック様は外出中でして、代わりにガイル様が……」


「ガイル?あの猪野郎か。……まあいい、案内しろ」


「かしこまりました。此方です」


ゲドと呼ばれるその男はガクに近づけていた顔を離すと兵士の跡を追った。


「後でまたゆっくり話そうな」


その場に固まるガクにとどめを刺すかのような一言を放ってガクの視界から消えた。


──なんだ今の!?恐すぎんだろ……!


暫くその場から動けず立ち尽くす。正に蛇に睨まれた蛙状態だ。体感はザックやドムの比ではない。


「どうしたんですか?こんなところで」


ダイヤとの話が終わったらしく、固まるガクをレナがまじまじと見つめていた。


「あれはヤベェ。バケモンだ」


「なんの話ですか?なんだか騒がしいなぁと思って見に来たんですけど」


「お前ゲド様って知ってるか?」


「あー、元第二隊隊長の?1年前の事件以来ですね、久しぶりに会いたいなぁ!」


──会いたい……?


予想外のレナの反応に困惑。口をぽかんと開けたまま再び硬直した。






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