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回復術師の戦闘員  作者: 烏天狗
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43話 再始動

見るからに高そうな巨大なシャンデリアが天井にぶら下がり、周囲を囲む棚には宝石から謎めいた置物まで綺麗に整頓されている。皇室のテンプレートのような一室だ。


しかし、そんな様子とは裏腹にしんと静まり返っている室内。一人の少女が横たわるベッドを複数人が囲んでいた。


「どうしてこうなった。サンドラ、お前何してた」


「昼食の片付けを。一人で監視し続けるのには限界があるのよ。そういうあなたこそサレーネ様の性格を分かっているなら彼女に気付かれないように二人を探すことだって出来た筈よ」


ザックとサンドラがベッドを挟み口論を始めた。しかし、ガクは全ての理解に追い付かず二人を視線で追いながら論点を探る。


「そこまでにしとけよ。サレーネ様起きちまうぜ」


ザックの横に座っていたガイルが、静かに火花を散らす二人の止めに入る。チッと舌打ちをしてザックはその場を去った。


「どういうことだ?全く状況が分かんねぇ」


「ガクには後で話そう。そいつにも色々と説明が必要な様だしな」


ローガンの視線の先には汚れの目立つYシャツをだらしなく着こなすダイヤの姿があった。当然のように他の連中に混じっている。


「お前!」


「ガックン静かに!話すなら外出て話して!」


思わず声量が上がるガクを近くに居たレナが小声で注意。ガクの存在に気づいたダイヤが外に出るよう人差し指で合図を送った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「お前ここで何してんだよ!」


階段を下りた2階。ガクの部屋の半分ほどの広さの部屋。ダイヤの寝室らしい。


この城は地下付きの4階建て。最上階にある寝室はサレーネ、ザック、サンドラ、そして元国王の部屋。

その他の騎士の部屋は3階。勿論ガクもそこである。


そんな中でダイヤに与えられたのは2階の小部屋。自分との格差を目の当たりにし、ガクは内心僅かながら優越感に浸っていた。


「何って……解放してもらえたからお前みたく普通にここで生活してるだけだよ。お前俺を解放してやるって言ったきり来なかったじゃんか!」


確かに言っていた。が、それ以外に色々ありすぎてガクの頭にダイヤのことなど残っていなかった。

今さら忘れていたなど言えず、上手く誤魔化そうと話を剃らす。


「とりあえず、今は色々と立て込んでんだよ。お前これからどうすんの」


「暫くは此処に居させて貰うかな。兵士として」


ダイヤは回転式の椅子に腰掛けながら足で床を蹴りゆらゆらと落ち着きなく揺れ、軽く適当な返事を返した。


「ただの兵士ならこの城が建つ丘から一段低い場所にある兵士村だろ。なんでここにお前の部屋が用意されてんだよ。魔法とか使えんのか?」


「魔法?ないない、ヨルムに居るときもずっと客人扱いだったし。ガクはどうなん?なんか出来んの?」


「まあ一応な、自慢できるほどの力じゃねぇけど自己回復、みたいな?実際それがなかったらとっくに死んでた訳だし」


ガクはそのまま座っていたベッドにごろんと寝転がり大きな欠伸をした。


「すげぇじゃん!不死身みたいな?いいなぁ、俺もなんかねぇかなぁ」


「そ、そうか?全く戦闘向きじゃねぇぞ」


子供のように羨ましがるダイヤの反応にガクは少し照れる。この城の中でサレーネを除くと断トツで力の劣るガクの傷ついた自尊心が少しだけ回復した。


「お前も調べて貰えば?俺の場合は怪我したら勝手に稼働する能力だから良いけど他の奴はしっかり稽古積んでるみたいだし……知らないだけってこともあるかもしんねぇだろ」


「なるほどね。俺にも可能性はあるかも知れないってことか。で、誰に?」


「それはシャーロ……」


ガクはその名前を言い掛けて思い出した。奴は今そんな事出来る状態にないことを。


「ああ、それってもしかして捕まってた爺さん?じゃあしょうがねぇな。ま、急ぎでもないからいいけど」


──捕まってた……?


過去形になっていたことが引っ掛かった。頭の悪いダイヤは度々このようないい間違いはするのだが今回のは話が違う。確認もせずスルーすることは出来ない。


「捕まってた、だともう捕まってないって風に聞こえるだろ?」


「だってそうだろ?あの爺さん昨日の夜殺されたじゃん」


「え……」


あまりの衝撃に勝手に体が動きだし乱暴にドアを開けると地下牢を目掛け一直線に走りだすガク。ダイヤの呼ぶ声も彼の耳には入らない。


──なぜシャーロットを殺した!誰が!何のために!


「ガックン!?どうしたの?」


「何かあったか?」


稽古のためか上階から降りてきたレナとローガンに鉢合わせる。ガクは二人を無視し一段飛ばしに階段を降りるとそのまま走った。


走りながら様々な説を思い浮かべようとするが一番信じたくない事態だけがガクの脳をを埋め尽くす。


──クソッ……!童話なんて信じるんじゃなかった!


きつく唇を噛み締める。

改修されていない古びた扉がだんだんと明瞭になる。


力を加えれば取れてしまいそうなドアノブを握ると力強く捻り開ける。

オレンジ色の松明が灯る石階段を降り更に下へと続く隠し扉を開けたところでここから先には松明がないことを思い出した。


「クッソ……!」


ガクは周りを一周見回し使えそうなものがないことを確認。しかし、使えそうなものは何もなく仕方なく手探りで下へ続く急な階段を後ろ向きで降り始めた。


「おい、シャーロット!居んのか?こんな狭いんだから聞こえるだろ?」


声を上げながら壁を伝う。少し進んだところで突き当たりに当たったらしくそのまま壁に沿って進路を変えゆっくりと進んだ。


金属のヒヤリとした感覚が右手に伝わる。鉄格子だ。が、


「やべっ……!」


ヌルッとした何かに足を取られガクはその場に尻餅を着いた。再び立ち上がろうと床に手を着いたその時、多量の液体がパシャリと音をたてガクの手を濡らす。


「ガックンどうしたんですか!?」


跡を追ってきたレナとローガン。レナの手から届いたLEDの光がガクの周辺を照らした。


「ウソ……」


「どうゆうことだ……」


白色光が照らすガクの周囲には真っ赤な液体が水溜まりが形成され、その先で檻にぐったりと寄り掛かっている老人へと繋がっていた。























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