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回復術師の戦闘員  作者: 烏天狗
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21話 黒ループ

首の痛みとゴツゴツとした椅子の背もたれを背中に感じ、目を覚ます。

目の前には窓から差し込む光をキラキラと反射する金髪の少女がベッドに気持ち良さそうに眠っている。その姿はマンガやアニメに出てくる女神そのものだ。


──朝か……。なんで俺はここで……


一瞬にして昨夜の記憶が脳裏に浮かび赤面。自分のしたことが言葉にできないほど恥ずかしく思えてくる。


──とにかく今この状況は良くない!なんとかしなければ……!


落ち着きのない様子で部屋の中を意味もなく動き回る。


──落ち着け!落ち着け!……とりあえず誰にも見られないうちに俺がここを出るしかない!


そっとドアを開けて廊下に誰もいないことを確認。静かに右足を踏み出そうとした刹那、食堂の方から甲高い聞きなれた声が響く。


「またレナですか?もう毎日起こすの面倒なんですけど!」


危険を感じ、出しかけていた足を引っ込めドアを閉める。


──これはまずい……!確実に俺の部屋に来る!


「ガク君?どうしてここに……、あっ……」


ドアを勢いよく閉めた音にベッドで寝ていたサレーネが目を覚まし、昨日のことを思い出したように数分前のガクと同じ表情を浮かべる。


「あの後って、なにも……無かったよね……?」


「あ、当たり前だろ!へ、変なこと言うなよ!」


突然の強烈な質問に動揺。一方サレーネはどこかホッとした様子を浮かべる。


──もしかして俺ってそう言うやつに思われてたのか……


ガクの最も嫌いな部類の人間に見られていたような気がして少し凹む。


「ガックーン起きてますかー?入りますよー?」


「起きてるから!開けるのはちょっと待て!」


そうこうしている間にレナが部屋の前まで来てしまったらしく慌てて時間を稼ぐ。


サレーネも今置かれている状況に気づいたらしくあたふたし、どうしよう、とでも言いたいような顔でガクを見る。そんな事はガクの方が聞きたいくらいだ。


「珍しいですね先に起きてるなんて。それならガックン、サレーネさん知りませんか?朝から何処にも見かけないんですよ」


続けざまにガクを追い詰めるレナ。何処にも居ないのは当然だ。昨夜からずっとここに居るのだから。


「いや、し、知らねぇな……。俺はずっとここに居たから」


「そうですか、じゃあちゃんと来てくださいね」


「お、おう…」


とりあえず難は去って一安心。二人でハァと一息ついたのも束の間。


「……なーんて、ドーンッ!ガックンの部屋で二人きりで何してたんですかぁー?」


ドアの前で座っていたガクを飛ばし、レナが現れた。


「別に何もしてねぇよただ少し話してただけで……」


「そ、そうよ。本当に話してただけだから……」


「へぇーそうですか。まっ、レナは精霊と視界共有してるので全部見てたんですけどねー!」


悪巧みをするいたずらっ子のようにニヤニヤと笑う。


「知ってたんならいちいち言わせようとすんなよ!」


「えーだって照れる二人を見るの面白いじゃないですかー!」


「なんも面白くねぇよ!」


言い合いを続ける二人の後ろで顔を真っ赤にして硬直。こう言うイジりはガク以上に弱いらしい。


「もう、朝御飯冷めちゃいますよー!二人は熱熱かもしれないですけど!」


最後の最後までからかい続けて居なくなり、一瞬にして部屋が静まり返る。


──いや、気まず過ぎんだろ!こんな空気で二人にされても……


「……い、行こっか、もう隠す必要も無くなっちゃったし……」


「そ、そうだな……」


互いに目も合わせない棒読みの会話。コミュ障にとっては話せただけで十分合格ラインだ。

あっちに行けばもう一度一からイジられると思うと億劫だが、食べないわけにはいかない。ギクシャクした雰囲気のまま仕方なく部屋を後にした。



※ ※ ※ ※ ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



ガクの予想通り終始イジられ続け、朝食を終えた。

レナ、ガイルだけでは収まらず、ザックまでもが口を挟んできたのだからもうお手上げ。黙って聞き流し、終わるのをただただ待つだけだ。


朝のドタバタもあったせいか、変な疲れがドッと出る。もう一眠りするために部屋へと戻ろうと伸びをしながら廊下を進む。


「愉快な朝食だったわね」


「何が愉快だよ。ったくめんどくせぇよ、ほんと……」


知らぬ間に後ろに立っていたサンドラが珍しく話しかけてきた。これはおそらく何かしらの話があるのだろうと思う。


「なんか用か?ねえなら俺は寝るけど」


「察しが良いわね。こんなものが落ちてたからあなたの物かと……」


胸ポケットから小さな四角い箱のようなものを取り出した。


「それは……なんで」


「こんな物ここら辺で見ないもの。だからあなたの持ち物じゃないかと……。違ったかしら?」


サンドラの手にしていたものは数日前にレナにあげた盗聴器だった。なぜか電源オンの状態になっている。


「俺のっちゃ俺のか。まぁ一応俺が持っとくよ」


「そう。ところでそれは?」


「盗聴器っていって人の話を録音するやつ。まぁ、お前みたいに心の中まで読めるやつには必要ねぇガラクタだよ」


おそらくレナが、電源を入れたものの上手く使えずその辺に投げて置いたんだろう。


「不思議なものもあるのね。私の用はこれだけよ、おやすみなさい」


思いの外、どうでもいい内容で何か物足りなさもあるが何もないに越したことはない。それよりも、


──あいつが欲しいって言ったからあげたのにな


やはりどこの世界でも安物は安物。この程度の扱いをされてもしょうがない。静かにワイシャツの胸ポケットへしまった。




























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