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 宣告通り週末には出張のため、アレクセルはしばらく王都を離れる事となった。

 当日の朝、いつものように使用人一同と共に、妻であるシルヴィアも見送った。


 アレクセルが邸を出立して、一人寝室に戻ったシルヴィアはポツリと呟く。


「また新婚なのに会えない日々に逆戻り……、でもやって来たチャンスを逃してはいけないわ」


 本来であるならば、女主人としてアレクセルの不在時に、公爵邸を守らねばならない事は重々承知である。それでも今自分が最優先すべき事の為に、シルヴィアは思索を巡らしていた。


 アレクセルが王都を離れた次の日、シルヴィアはトレースに自身もしばし邸を離れる事を伝えた。

 


「ごめんなさいトレース。どうしても今取り掛からないといけない研究があって、私が必要みたいなの。ギルバート殿下からのお達しだから、断る事も出来なくて……」


 既に荷造りを終えたシルヴィアは、宮廷魔術師の制服に身を纏い、トレースと向き合った。


「畏まりました」


 表情一つ変えず、頭を下げるトレースを見ながらシルヴィアは続ける。


「旦那様の留守中で心苦しいけど、邸を頼みました」

「国の為に尽力なされる奥様を誇りに思っております。お任せ下さい、邸の事は使用人総出でお守り致しますので、ご心配なさらず」


 優秀な執事トレースや、公爵家の使用人達なら心配など不要だとシルヴィアは思っている。


(私なんか足元にも及ばないくらいには……)


 そして『国の為』というのは決して間違ってはいないが、トレースの言葉はシルヴィアの心をチクリと苛ませた。


「旦那様がお戻りになられる前には、帰るようにするわ。もし何か連絡事があれば、王宮の方へ手紙を出して貰えないかしら?」

「畏まりました」


 アレクセルが王都を離れた翌日、シルヴィアも公爵邸を離れる事になった。王宮へ……ではなく、隣国に旅立つために。

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