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「え、今何と?」

「旦那様の愛人と言いました」


 シルヴィアの言葉に流石のセインも絶句した。


 アレクセルと共にいた女性は、自然と目が惹きつけられるような程の存在感のある、長身の美女だった。簡素な馬車に乗っていたのは、お忍びということか。

 本日は仕事という名目上、堂々と会うことが出来ないのだろう。


 それにしても、小柄で華奢な自分とは全く違ったタイプの女性だった。結婚相手には真に愛する人とは真逆の自分を選んだのかと、シルヴィアは妙に納得しつつあった。



「愛人などと……まだ決まった訳では……」


 セインの瞳に珍しく動揺の色が浮かぶ。


「でも、旦那様に愛人がいらっしゃるのは本当のことなのよね?隠さなくても、私は了承の上で旦那様と結婚したのよ。ちゃんと口裏も合わせるつもりだし、夫婦で人前に出る時は仲の良いフリを演じるくらい出来るわ」


「えっと、奥様は以前からアレク様に、愛人がいらっしゃると思っておられるのでしようか。その情報は、何方かからお聞きになられたりしたのでしょうか?」


 問われてシルヴィアは自身の記憶を探る。そういえば、本人から直接言われた訳ではない。


「え~と、一時期頻繁に夜会に出たりと、お目当ての方がいらっしゃるのではないかと社交界で話題になったそうなの」


 この詳細はセインも先日アレクセルから聞いたのだが、夜会で探し回っていた相手は他でもないシルヴィアである。

 しかしセインの口からそれを伝えてもいいものか逡巡していると、シルヴィアが声を上げた。


「あ、そうだわ。ギルバート殿下が、旦那様には愛人がいらっしゃるって」

「……」


 王太子の名が出た途端、再び言葉を失ったセインを前に、シルヴィアは突如緊迫した表情を見せた。


「そうだわ!私大切な事を忘れてましたっ」

「何でしょうか?」


 首を傾げるセインに、シルヴィアは声を弾ませる。


「今日は揚げパンを食べると決めてたのよ!セインも付き合ってくれるわよね?」



 内緒の趣味だったはずの、下町グルメ探索。バレてしまっているのなら、開き直るより他は無い。こうなったらセインにも付き合って貰うつもりだ。


 この後出来立ての揚げパンを二つ購入し、二人でベンチに並んで食べた。

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