表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/67

13

「えっ……レティシア様が!?レティシア様はご無事なのですか!?」

「あぁ、怪我はなかったようだ。しかし身の危険を案じて、発火事件が起きて直ぐに隣国へと帰国なされた」


レティシアの無事を知り、シルヴィアは胸を撫で下ろす。


「そして今朝新たに、レティシア様のお部屋に飾られてある絵の中に、謎の文字が浮かび上がるという現象が起きていた」

「怖いですね……」


言いながらシルヴィアは身を震わせる。

レティシア不在とはいえ、何故同じ部屋から不可解な現象が起こり続けるのか──



「絵に浮かび上がった文字を解読するようにと、殿下からのお達しなんだ。絵は別室に移動済みらしく、今から文字を書き写しに行こうと思ってな。さっそくで悪いが、手伝ってくれないか?」

「勿論です。それにしても誰がそのようなことを……。レティシア様が、殿下の婚約者であることに不満を持つ者の犯行でしょうか?」

「その可能性は高いとみている。それか隣国との亀裂を産もうと企てる、何者かによる犯行か……」

「そんな……」


王族の政略結婚における重要な目的の一つは、和平にある。王族の血が流れる隣国の公爵令嬢レティシアを、危険に晒すとなると長年の友好関係が、壊れる可能性がある。

もしもの恐ろしい未来を想像してしまい、シルヴィアの胸に不安の影が差す。


取り敢えず三人は、絵を保管してある部屋まで部屋まで足を運ぶことにした。


レオネルを先頭に、その後ろからシルヴィアとテオドールが付いていく。三人で絵を保管している場所へと向かう道中、テオドールがとある疑問を口にした。


「そういえば、ルクセイア公爵閣下との結婚生活は順調なのか?」

「え?旦那様ですか?全然家に帰って来ないですけど、仕事が忙しいとかで」

「え」


これにはテオドールと、前を歩いているレオネル二人同時に表情が固まった。


「まぁ私は快適に過ごしてるから、特に気になりませんが」

「それで良いのか……」


戸惑う男二人を気に留めず、シルヴィアは平然と歩みを進めた。そして部屋の前まで辿り着くと、まずレオネルが扉をノックする。


絵の調査に来た事を告げると、中から「どうぞ」と涼しげな声が聞こえた。


「失礼致します……!」


驚いた様子のレオネルを訝しみつつ、シルヴィアは長身の彼の背後からぴょこりと顔を出す。

部屋の中を確認すると、シルヴィアの青の瞳が驚きで見開かれた。

中に居たのは紺色の制服に身を包んだ、美しきワインレッドの髪の騎士。


「旦那様……?」

「シルヴィア、どうしてこちらに?」

「えっと……調査に……」


現在シルヴィアは、結婚後の休暇に入っている。

当然夫アレクセルはそのことを知っており、予定も把握されている筈である。何故シルヴィアが宮廷魔術師として出仕しているのかと、さぞかし驚いているに違いない。


(然程わたしの予定に興味がない可能性もあるけど……)



前日の夜にきちんとトレースから、出仕について了承を得ているし、問題はない筈だ。

ただ今まで王宮で、ばったりアレクセルに出くわした経験があまりなく、完全に油断していた。お陰でかなり動揺している。


「そうですか、私は殿下から魔術師方の護衛をと頼まれております。どうぞ」



部屋へと通してくれたアレクセルに対しシルヴィアは「旦那様って、本当にお仕事していたのですね!?」と言う言葉を必死に飲み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ