プロローグ
思いつきました続けるかどうかわかりません。
「剣に宿るは英傑なる赤」
両手に持つ剣が赤い光に包まれる。
しかし発光は数秒でおさまり元のなかば錆びついた剣に戻ってしまう。
「やっぱり私、才能無いかも」
日課になっている素振り1000回を終えたので戦華を剣に纏う練習をしてみたが、うまくいかない。
「これじゃ全剣闘士なんて夢のまた夢だよ、エシェルちゃんなんて、もう戦華を自在に操ってるっていうのに」
「出ました出ました、ネメル嬢のぼやき癖」
目の前の黒猫がウンザリという声色で合いの手を入れてくる。
「仕方無いじゃん、エシェルちゃんの才能を目の当たりにしたら自信なんてもうぽっきり折れちゃうんだから」
「ありゃ遺伝子の問題、才能っていうより家系のおかげだろ」
「名門、エンデ家の御令嬢か、私も名門って言われる家に生まれて来たかったよ」
「はぁ〜い?
ネメル嬢はおばかさんなんですか?
ネメル嬢の家だって立派な名門だろ?」
「名門も名門、だけど、大魔法士のね」
「それのどこが悪いのさ?
大魔法士、立派な職業じゃねーか。
俺達だってそのおかげで出会えたんだぜ?」
「別に、出会いたくありませんでしたけど?」
「おいおいおい、このラブラ様を前にそういうセリフを真顔で言ってくれるなよ、傷付くじゃねーか!!」
まるで人間の様な流暢な台詞回しと、表情豊かなその様は、黒猫が、ただの猫では無い事を語っていた。
「ねぇ、ラブラ、前にも言ったけど、私あんたと契約した憶え、全く無いんだけど?」
「ふぅ〜、これだからお子ちゃまは、俺達のあの熱い一夜はそりゃ〜もう、、。
一言では語り尽くせない、蜜の様にとろける一夜だったぜ」
「キモ、あんた、本当に気持ち悪いんだけど。
中身何歳なのよ」
「ふふん、自慢じゃ無いが、物心ついて160年を超えた辺りから数えるのはやめたぞ」
「キモオヤジを更に超えてキモおじいちゃんじゃん」
「やめてくれたまへ、俺達悪魔には時間なんて概念は元から無いんだ、生まれてからずっと同じ姿だしな」
「本当にどうでもいいけど、私のなりたい職業は、魔法使いじゃなくて、剣士なの」
「ああ、天は何てバカに魔法使いの才能をお与え賜ったのか」
「あんたマジで一回しばくわ」
「おいおい、ネメル嬢、それは立派な動物虐待ってもんだぜ?」
黒猫がキザな台詞回しでそう言うや否や、森の雰囲気が180度変化した。
「ネメル嬢?」
「バカ、私じゃ無い」
「ふー肝が縮んだぜ、でもこりゃ・・」
「かなり高レベルの魔法干渉」
「お前の家のもんか?」
「違う、これは今迄感じた事の無い、魔力。
それに家にこんな気持ち悪いベトついた黒い魔力を操る人間なんていない。」
「ふへへ、流石に検索が早いな、今の一瞬で過去のアーカイブ全部閲覧したのか?」
「そんな面倒な事しなくても感覚でわからない?」
猫が目を点ににする
「普通分からないだろ?」
「ふーん、そんなもん?」
「かぁ、、本当に天才の無駄使いだなネメル嬢!」
「シっ静かに、多分見られてる」
「ちっ!!
ここが誰の縄張りか、分からせてやる必要がありそうだな」
「あんたの縄張りでも無いでしょーに」
「俺のいる場所は全て俺の縄張りだ」
「はいはい、お爺ちゃん、そういうセリフは若い内で卒業しましょうね〜」
「年寄り扱いすんなっ!
だから俺に時間という概っ」
バリっという重い音がすると、今迄一人と一匹が居た部分が抉れ土煙が発生する。
「獣?」
重機で抉り取られたかの様な地面を見つめてボソッと少女が呟く。
「モンスターか?」
「それとも違うけど多分・・・獣」
「透明の獣?
厄介だな」
「厄介なのは術者の方よ、透明な獣なんて書物で読んだだけの御伽話。
多分、敵はクリエイター、特殊な獣を作り出して私達を襲わせてる。」
「ネメル嬢、、命を狙われる憶えは?」
「あらお爺ちゃん、痴呆が始まったのかしら?
こんな事、日常茶飯事でしょうに」
「ネメル嬢、飯はまだかね?」
「あら、お爺ちゃん、朝ご飯はさっき食べたでしょう?」
「ふへへ、命を狙われてるってのに、冗談を言えるなんてな」
「もう慣れたわ、こんな日常、だから嫌なのよ、家のゴタゴタに巻き込まれるなんて!」
「剣の道に逃げ込みたくなるくらいにはな、でもネメル嬢、あんたに眠る魔力の凄まじさは、それを許さないぜ」
「・・・・だから嫌なのよ。
一つ訂正、私は逃げ込んだんじゃない、私自ら剣の道に邁進するって決めたの、目指すは闘士、その中でも世界に認められた12人にしか与えられない全剣闘士。
それ位になんなきゃ、アイツらに本当に魔導を捨てたって認めてもらえないから」
「認められなきゃ刺客は送り込まれ放題だしな、こりゃ死活問題だわな、うけけ」
「いい加減笑ってないで、仕事しなさいよ」
「あいあいさ」
黒猫がそう返事をすると、その体は禍々しい黒に覆われ、宙空に黒い球となって浮かぶ。
少女がその黒い球に右手を差し入れると、黒い球から触手が伸び肘の辺りまで、少女の腕を黒く侵食した。
侵食した触手は少女から何かを吸収する様にドクドクと脈動し、それを終えると、その姿を一振りの刀へと変貌させた。
少女が元々持っていた錆びついた剣を地面に放り投げる、すると、ボンという音がし、地面にめり込んだ。
「行くわよ、ラブラ」
少女は見えない敵に向かって構えを取った。